燃費不正問題に揺れた三菱自動車が、日産自動車の傘下に入って1年を迎える。最終赤字に陥った2016年度から回復軌道に乗りつつあるが、規模の急拡大を要する中期目標を無事にクリアできるのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)
「まさにゴーン流のアメとムチ。認めてもらえた分、当然、責任は伴う。応分のことはやれということだ」
三菱自動車の幹部がそう語るのは、仏ルノー・日産自動車・三菱自連合(アライアンス)のカルロス・ゴーン会長兼CEO(最高経営責任者)が9月15日に発表した今後6年間の中期経営計画「アライアンス2022」についてだ。
ゴーン会長はこの日、「三菱自のアライアンス加入により東南アジア市場やプラグインハイブリッド車(PHV)など複数のセグメントが強化された」と述べ、三菱自の強みがルノー・日産の弱みを補完すると強調。3社を象徴する赤やだいだい色などの3本の曲線を組み合わせたアライアンスの“新ロゴマーク”もお披露目し、三菱自を3社連合の一角として内外にアピールしてみせた。
三菱自の多くの社員からすれば、アライアンスの対等なメンバーとして認められ、スリーダイヤの矜持を保つことができたに違いない。まさに「アメ」のように甘いプレゼントだ。
一方でゴーン会長は2022年までにアライアンスの年間販売台数1400万台、売上高合計2400億ドルという極めてアグレッシブな見通しを示した。そのうちの相当量を、三菱自も割り当てられるとみられ、当然、達成責任を負うことになる。
燃費不正問題で“病み上がり”のような状態の三菱自は、休む間もなく「ムチ」を振るわれ、結果を求められることになるのだ。
シナジーと東南アジア市場の追い風が武器
そんな三菱自に足元では追い風が吹いている。
16年度に1985億円の赤字に陥った最終損益を17年度には黒字に転換し、V字回復をもくろむ(図(1))。
業績回復の大きな要因は、日産とのシナジーが確実に表れ始めていることだ。
図(2)は、販売費および一般管理費を構成する「広告宣伝費および販売促進費」と「運賃」の推移だ。
運賃が大幅に減少しているのは、日産との車両の共同運送などによりコストを削減できているためだ。こうしたシナジーの合計は17年度に250億円、18年度には400億円を見込む。