小室 そこまで踏み切った決断ができる経営者って、なかなかいないと思います。

田中 もちろん簡単なことではなくて、やはり半年くらいかかりました。役員から何回言われても変わらないくらい。人を増やそうという話はしていたんですけど、そういうプロジェクトだと他の人も行きたくなくなっちゃうので、悪循環になっちゃって。もう決して1人の問題じゃなくなっていました。

小室 リーダー自らが長時間労働をしながらのマネジメントは、ご本人が思っている以上に悪影響が出ているわけですね。そこに対話をして切り込んだのは重要ですね。

 今まで900社以上の企業の働き方改革コンサルティングをしてきて感じたのは、日本の職場を見ると、一人ひとりは非常に優秀で頑張り屋。でも頑張るときに睡眠時間を削ることで、簡単に言うと不機嫌になるんです。だから小さいことで周囲の人にムッとしたり、返事をしなかったりして、周りの人もモヤモヤを抱えてしまう。そうやって、みんながちょっと不機嫌になっている職場って、みんなが出勤するのがつらくなってきて、仕事上の会話をするのも苦痛になって……著しく生産性が落ちるんです。

田中 「一人ひとりがちょっと不機嫌」って、リアリティがありますね。 職場の健康がいかに大切か、痛感しています。

“対話から始める働き方改革”
はリバウンドしない

小室 田中社長からのお話に何度も「対話」という言葉が出てきましたけど、対話から始まる働き方改革というのが一番リバウンドしないんです。

 逆に、トップが良かれと思って十分な対話をせずに急に定時で鍵を閉めたり、シャットダウンしたりするケースは少し心配です。そういう強硬策がうまくいく場合もあるのですが、社員が腹落ちしていない段階で会社を閉め出されると、被害者意識を持ってしまうんです。

「自分は仕事を減らしてもらっていない。にもかかわらず、強制的に帰らされるということは、仕事を持ち帰れということか、お客様に迷惑をかけてもいいってことか」と。

田中 よくある話ですね。社員に被害者意識を持たせずに、主体的になってもらうにはどうしたらいいんですか?