秋になるとスエードの活躍機会が増えてくる。洋服だけではなく、アクセサリーや靴など広く愛されている。
フワフワした起毛感がかわいく、暖かく感じる。特にブーツなどで足元が暖かい印象は好感を覚える。レザーと同じ素材で表裏の関係なのに、レザーとは全然違う印象なのだ。
美人はスエードとの付き合い方がうまい。さりげなく取り入れていている。フワフワ感なのに、ぼんやりした感じがなく、むしろしまって見えるのだ。このしまった感じをつくる方法は何なのだろう。
それは丁寧な扱いにあると思う。
スエードは革の内側をなめしてきれいな起毛感をつくっている。そもそもデリケートな仕上がりである。汚れやすいし、傷も目立ちやすい。
だからこそ、お手入れをこまめにやる必要があるし、お手入れをすることで風合いがよくなっていく。お手入れに対して素直な存在だ。「ヨシヨシ」と誉めながら育てるように。そして、その「ヨシヨシ」は、持ち主の美人のもとを増やす。
ヨシヨシで育ったスエードはどんどん本人になじんでいく。一体感だ。汚れやすいスエードなのに清潔感が出てくる。
このなじんでいる様が、しまって見える原因なのだろう。
一方、スエードへのヨシヨシが少ない人もいる。たとえばブーツを買ったままほとんどお手入れもせず履き続けている人。どうしても足癖である部分が変色するのだが、そのまま。汚れをどんどん集めている感じ。それにより、しまった感じよりも不潔な場所をつくっていくのである。ヨシヨシされずにスエードがどんどんグレていく。グレたスエードは「美人のもと」を減らしていく。
店で「かわいい」と思って買ったものがグレてしまい、厄介なものに変わっていくのだ。ところが本人はずっと「かわいい」と思い続け、結果として「美人のもと」を減らし続けることになる。
スエードは素直だ。その扱いで大きな差をつくってしまう。かわいいと思ったものをいつまでもかわいがって育てる。モノからなんでもかんでも享受するのではなく、自分のモノを成長させるという姿勢がカタチになるのだろう。