世界の統計データによれば、長寿の秘訣は食生活であって、生まれ持った体質ではない。また、実際に100歳以上生きた人たちの食生活には多くの共通点があり、学ぶべきことが非常に多い。では、その共通点とは何か? 20万人以上の臨床経験と、生化学×最新医療データ×統計データから、医学的エビデンスに基づいた本当に正しい食事法をまとめた牧田善二氏の新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』から、内容の一部を特別公開する。
長生きする人には共通のルールがある
――世界の統計データからわかる「体にいい食べ方」
世界の平均寿命は、この35年間で10年も長くなりました。日本でも「人生50年」と言われた時代があったことなどウソのように、いまでは「100歳まで生きる」ことが普通になろうとしています。
実際に、100歳を超える日本人はすでに6万人を突破しています。私たちも、その仲間入りをすることは可能でしょう。
でも、それを私の患者さんに伝えると、みなさん笑います。「そんなに生きなくてもいいです。せいぜい85歳くらいで満足です」と。
しかしながら、100歳を迎えた人たちに「もう十分ですか」と問えば、「もっと生きたい」という答えが返ってくるそうです。というのも、100歳になってはじめて到達できる幸福感、煩悩の少ない独自の宇宙観のようなものが持てるようなのです。
そういう素晴らしい世界が味わえるのなら、私たちもぜひとも100歳を超えて生きてみたいものです。
では、そのために、いったいなにをしたらいいのでしょう。まだ、そこに到達していない人の理屈に耳を傾けるより、現実に100歳を超えて生きている人たちから学ぶのが一番ではないでしょうか。いま40歳の研究者が、「こうすれば長生きできる」と言っていても、その人自身がいくつまで生きるのかわかりません。
それよりも、100歳を超えて生きた人たちがなにを食べ、どう暮らしてきたかを知り、まねしていくことを私は選びます。
長寿者たちの生活については、以前から世界中でいろいろな研究や調査がなされてきました。それらの結果わかっているのが、もともとの遺伝的体質が違う人たちが集まっているはずなのに、健康長寿の人が多い地域や、逆に寝たきりの人や短命者が多い地域が存在するということです。
つまり、持って生まれた体質よりも、食事をはじめとした生活習慣が「長生きできるか短命か」に大いに関与していることが、統計的に明らかになっているのです。
第5回で紹介した近藤正二博士の研究もその1つです。博士の調査では、海岸ぞいにも山奥にも長寿村と短命村が存在し、それぞれ食事内容に特徴があることがわかっています。
最近では、イタリア南部アッチャロリという地域に、100歳を超える住民が非常に多いことが注目されています。アッチャロリに暮らす高齢者たちの毛細血管は非常に若く、20代の若者と同等の人すらいるそうです。彼らは、新鮮な野菜や魚をオリーブオイルとともに食べる習慣を持っています。
また、アメリカの「ナショナル・ジオグラフィック」誌の記者を務めるダン・ビュイトナー氏は、長寿者の多い地域をレポートし、『ブルーゾーン――世界の100歳人に学ぶ健康と長寿のルール』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)という著書にその結果をまとめています。
タイトルにもなっている「ブルーゾーン」は、100歳を超えるような長寿者が多い地域を指しており、具体的に以下の4つの地域を取り上げています。
・イタリアのサルディーニャ島中部
・日本の沖縄北部
・アメリカのカリフォルニア州ロマリンダ
・コスタリカのニコジャ半島
新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』では、こうした貴重な文献を読み解き、私なりに長寿者たちの「生活上の共通点」をまとめています。
この「生活上の共通点」というのが大事で、長寿かどうかは単純に国籍などで括れるものではありません。たとえば、沖縄県がその典型です。『ブルーゾーン』でも指摘されていますが、沖縄には寿命に関して「2つのグループ」が存在しています。
1つは、100歳以上の長寿者が多い北部です。こちらは、ゴーヤを日常的に摂取するなど昔ながらの食生活を維持しています。
もう1つが、南部の那覇近辺を中心とするアメリカ文化を謳歌している地域です。ファストフードやランチョンミートを多食し、肥満者が増え、心臓疾患で早死にする人が日本で最も多くなっています。
アメリカ文化の侵入を「コカ・コロナイゼーション」と言いますが、それによって食事を変えれば人間の健康状態は大きく影響を受けるのです。『ブルーゾーン』で取り上げられたサルディーニャ島にも、最近、コカ・コロナイゼーションの波が押し寄せていることから、もしかしたらいずれ長寿地域ではなくなってしまうかもしれません。
そういうものに毒されることなく、これから述べる長寿者のルールを身につけ、100歳過ぎまで生きて、素晴らしい世界を堪能しましょう。
『医者が教える食事術 最強の教科書』では、100歳まで生きる長寿のルールを10個紹介していますが、ここではその中から1つをご紹介します。残り9個が気になる方は、ぜひ同書をお読みになってください。