当然ながら、内部留保は札束として金庫に眠っているわけではなく、工場設備になったり部品の仕入れ代金になったりしている。ちなみに、トヨタ自動車の保有している現金等は2兆円、定期預金は1兆円のみである。少なくともトヨタ自動車は、金利のつかない金を貯め込んでいるのではなく、設備投資等で既に有効に活用しているのである。

株主に分配するだけで
設備投資には回さない

 大企業は資金調達が容易なので、もうかりそうな設備投資案件があれば実行するし、なければ実行しない。実行すると決めたら、必要な金額だけ調達する。調達方法は、増資か借り入れ、もしくは内部留保である。

 いずれを選択するかは、借入金利なども考慮しながら意思決定が行われることになる。これは、実はビジネススクールで教える重要事項の一つなのであるが、とりあえず今回は、「低金利なので設備投資資金は全額銀行から借りる」「利益の一部を配当し、残りは内部留保する。留保といっても札束を積み上げておくのではなく、借り入れの返済に用いる」としておこう。設備投資資金自体は銀行借入で賄われるが、毎年度末に利益が確定した時点で、一部は内部留保資金で返済するというわけである。

 設備投資額が決まると、資産総額(バランスシートの左側)が決まり、次に内部留保額が決まると純資産額が決まるので、資産総額から純資産額を差し引いた金額が借金の金額となるのである。

 内部留保に課税するとなると、大企業は内部留保を配当として株主に分配するであろう。その分だけ純資産が減るので、負債での調達が増えることになる。もっとも純資産が減って負債が増えると、少額の損失でも債務超過に陥ってしまうリスクが高まるなど企業経営が不安定になるので、場合によっては、「純資産が減りすぎるのを防ぐために内部留保を一部残して納税する」「純資産が減りすぎるのを補うために、借金ではなく増資が行われる」といったこともあろう。

 ただ、それだけである。決して設備投資が増えることはないのである。