世界で最大にして最も厄介なリスク
ユーロ問題の解決にはまだ紆余曲折も
10月26日のEU会議で、ようやくギリシャ債務の50%のカット率(債務免除割合=ヘアーカット)や、EFSF(欧州金融安定基金)の規模拡大・機能強化に関する合意が成立した。とりあえず、金融市場の参加者はほっと一息ついたところだ。
しかし、これでユーロ圏の問題が全て解決したわけではない。まず、今後のギリシャ債務免除に関する扱いに関しては、これから検討されるべき問題が多い。
たとえば今回の合意では、ギリシャ向けの債務免除については、債権保有者が自発的に行なうことを求めている。これがデフォルトに該当するのか、しないのか不透明な部分がある。
また、50%の債務免除を認めた場合、多額の債権を保有する金融機関がそれに耐えられるかどうか。あるいは、金融機関がその痛手に耐えられない場合、本当に、資本市場から増資資金を調達できるのか。それぞれについて、疑問の余地がある。
そうしたユーロ圏の不透明要素の副産物として、“とばっちり”と言ってもよいかもしれない現象が起きている。それは、為替レートが史上最高値を更新した「円高」だ。今回の円高傾向は、わが国の経済が好調なため円が買われているわけではない。むしろ消去法的に、円に投資資金が集まっているのである。
金融市場はユーロ圏問題という、とても大きな不透明要素=“爆弾”を抱えている。そのため、誰もできるだけリスクをとりたくない。そこで投資家が注目したのは、安全通貨である円だ。「とりあえず、円を買っておけば安心」という考え方になるのである。
しかも、取引自体が少ないため、どうしても値が飛びやすい。日本の政策当局による介入の影響が出にくい欧州や、ニューヨーク市場で仕掛けると、円がするすると上昇する展開となっている。
今、世界経済が抱えている最も大きく、しかも扱いが厄介な問題は、ユーロ圏のソブリンリスクであることは間違いない。10月26日の会議で、とりあえずの合意は成立したものの、それで問題がすべて解決されたわけではない。