3年で8つの事業を立ち上げた山口揚平さんによる起業家のための大人気連載の第5回。前回に引き続き、利益を生むしくみである「利益方程式」について解説します。利益方程式をつくるうえでは、サービスを提供する「バリューポイント」と収益が上がる「マネタイズポイント」の2つに注目することで、利益を生むしくみが見えてきます。詳しく見ていきましょう。

ハーバード、オックスフォード、日本の有名私大、本当の収益は授業料でなく◯◯。図1 事業創造フレームワーク 第4回、第5回では、「準備期の利益方程式」について解説します。
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売上の大きくないウェブサービスが
運営されている理由

 利益方程式は、利益=ax+by+cz+…のようなシンプルな方程式のような形で記述できるとよい。「単価」「顧客数」「顧客獲得コスト」といった重要な項目をシンプルな掛け算・足し算で表す。利益が入ってくる、もしくは損失がしばらく続く、といった構造を示すのだ。

 月次や年次の細かい財務数値を算出しない点で、財務計画とは違う。あくまで、利益方程式の目的はキャッシュの出入りを表すことで「利益を生むしくみ」を言語化することだ。

 私が立ち上げた財務分析ウェブサービスの例を出そう。ユーザーは会員登録することでさまざまな企業の財務諸表を分析することができるが、ユーザーからの売上自体はそれほど大きいものではない。では、短期的には売上を多く生まないこのサービスがなぜ継続的に運営されているのか。

 それは、別事業に誘導して利益の創出につなげているからだ。財務分析サービス登録者向けに、M&Aなどの分野で定期的にセミナーを実施する。このセミナーを通じてPRをすることで、将来的に別事業のM&Aコンサルティングサービスなどの顧客になっていただく。事業間の連携を見越しているのだ。たとえ大きな売上を生まなくとも、財務分析サービスは運営する価値が大いにあると言える。

ハーバード、オックスフォード、日本の有名私大、本当の収益は授業料でなく◯◯。図2 財務分析ウェブサービスの利益方程式
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