『週刊ダイヤモンド』3月5日号の第1特集は「塾・予備校 入試改革で先手を打つ!」です。2020年から始まる大学入試改革の議論が、さかんに行われています。まだ詳細は固まっていませんが、これまでの入試とは異なり、記述式の問題や、英語の4技能(読む・聞く・書く・話す)が取り入れられたり、コンピューターで解答を入力したり……と、大きな変更が予定されています。入試が変われば、学校教育や塾・予備校も変わらざるを得ません。この点を核にしつつ、今年度の入試を踏まえた塾・予備校業界の最前線をレポートしました。

「こんな改革をやっていると言わなければ、予算が取れません。現状維持だけでも大変なんですから……」
ある大学関係者は、文部科学省の幹部が講演で思わず吐露したこんな嘆きを耳にした。
今、国を挙げて改革に取り組んでいる大学入試改革。この幹部の言葉通りなら、とんだ大風呂敷を広げたわけだが、さにあらず。文科省の予算獲得の方便かというと、決してそれだけではない。
元はといえば、大学入試改革の必要性を求めているのは、産業界だ。というのも、リーマンショック以降、想像以上にグローバル化が進んだことで、自ら課題を発見し、それを解決できる能力や論理的思考力、高度なコミュニケーション能力の必要性が急激に高まってきたからだ。
その意向を汲み取ったのが、安倍晋三首相であり、首相の肝いりで設置された教育再生実行会議。この会議では、現状の「知識偏重型の1点刻みの大学入試」を改め、大学入試センター試験の見直しや、多面的評価などに踏み込んでいる。
その提言を受け継いだのが、日本の教育のあり方を議論する中央教育審議会。ここでまとまったのが、2014年12月に文部科学大臣に提出された答申だ。そこには、高校や大学での教育の枠組みの見直しのみならず、大学入試改革を「『待ったなし』で進めなければならない」と強調されている。