著者の白河桃子氏は「婚活」という言葉の生みの親でもあるジャーナリスト・作家であり、是枝俊悟氏はシンクタンクの研究員で税金や社会保障などの問題を専門とされていて、緻密で信頼性の高い分析をされているので、筆者はしばしばレポートを拝読している。既婚未婚を問わず、若い方も、若くない方も、自らの人生と家族のあり方を考える材料として、是非一読することをお勧めしたい。

 例えば、この本の56ページには、「夫の年収が600万円以下なら、専業主婦は『好きの搾取』をされている」という小見出しがある。搾取と見るか、それでも好きであることを喜ぶかは人それぞれであっていいと思うが、計算根拠は興味深い。

 是枝氏の分析によると、TBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」にも登場した家事労働の価格「月額19.4万円」は、機会費用法から計算した「子どものいない専業主婦世帯において主婦が貰うべきフェアな対価」であり、夫がこの対価を支払うためには月の手取り収入がその2倍(38.8万円)は必要で、この年額465.6万円を手取り収入として得るためには、2017年現在、590.5万円の税引き前年収が必要なのだという。なるほど約600万円だ。

 ちなみに、2013年版の政府の報告書によると、日本の女性全体の1時間当たりの賃金が1383円だという。ドラマでは、これに1日7時間の家事労働に20日間(合計140時間)を掛けた数字から19.4万円が導かれている。

 つまり、年収が約600万円に達しない夫に対して、専業主婦としての労働を提供することは、機会費用から見て割に合わないという損得感覚が女性にあるとすれば、夫になる相手に対して「年収600万円以上」を求めるのだろう。

 なお、政府の報告書では、専業主婦が年間に行っている無償の労働時間を2199時間として、専業主婦の労働の経済価値を304.1万円としているという。多くの専業主婦は土日に関係なく家事をしているので、こちらをベースに考えるなら、妻が夫に要求する年収は600万円よりももっと高くなりそうだ。