ヤフーの人材育成手法「1on1」は、社員の『才能と情熱を解き放つ』のが目的の一つ。しかし、対話を通して、「自分が本当にやりたいこと」に気づいてしまった社員は、それが実現できる場所を求めて会社を辞めることにはならないか。「寝た子を起こす」リスクと、その回避策・解消策について説明する。

ヤフーの人材育成「1on1」のせいで社員が辞めてしまう?(写真はイメージです)

社員が「本当にやりたいこと」に気づいてしまったとき

 今回は、ヤフー社外からいただいたご相談例の紹介から始めたいと思います。ご相談いただいた方は、ご自身が所属する会社で「1on1」を導入したいと考え、部署単位ではトライアルを始めているとのこと。さらに拡大すべく、社内外で積極的にヒアリングを行うなど、とても熱心に活動されている方でした。

相談の内容は以下のようなものでした。

 ヤフーさんが「1on1」を導入した目的には、『経験学習を促進する』と『才能と情熱を解き放つ』の2つがあると伺っています。前者については、社員の成長を促すのに有効だという点でとても納得度が高いです。しかし、後者については少々不安な面もあります。といいますのは、弊社内で1on1について意見交換をしていたところ、複数の管理職の者から、以下のような疑問が出てきました。

「部下に対し、1on1で問いかけを続けたせいで、『自分がやりたい仕事はこの会社にない』という結論に至って退職に繋がるリスクはないのだろうか。もしそんな社員が続出したら、会社としてダメージは大きい」

 私は1on1推進派ですが、この発言に対し、なんのコメントも返すことができませんでした。ヤフーさんでは、こうした懸念は生じていないのでしょうか。あるいは、なんらかの方策を講じているのでしょうか。

 実際、ヤフー社内でも同じような声はときどき耳にします。1on1でキャリアについて掘り下げていくうちに「やりたいこと」に気づいてしまった社員が、開眼して転職してしまうという話です。

 正直言えば、ヤフーでもそのようなケースが生じる懸念は否定できません。もし、会社規模が小さくて、事業領域や職種が限られている場合、この懸念はなおさらだと察します。