1on1と離職率の関係
「自分がやりたい仕事がこの会社にはない」かどうかを本当に確かめるためには、当然ですが、まず自分がやりたいことを明確にする必要があります。
また並行して、今の会社が自分に求めていることも明らかにしなければなりません。これらの両方が揃ってはじめて、正しい照らし合わせが可能になるからです。
ところが、どちらも不明瞭なまま結論づけてしまうケースが多々あるようです。
実は、この照合が中途半端なために、会社にフィットしていない気がする、貢献できていないと感じる、やりたい気持ちが湧いてこない、といった不安定な心象が生まれているケースが少なくないのです。
やりたいことと、求められていることをそれぞれはっきりさせると、これまで自覚していなかった接点が見えてきます。
これら2つがピタリと同じ方向を向いていることは稀でしょう。しかし、180度真逆というのも同じくらい稀です。
ということは、ゼロサムではなく、「どのくらい」という尺度で考えることになります。すると必然的に、重なっている部分が浮かび上がってくることになります。
誰もが、なんらかの縁があって現在の仕事に従事しているはずです。したがって、今やっていることが本人の志向や資質にまったく“かすりもしない”ということ自体が、実は珍しいということに気づきます。他者との対話は、こうした考察を深めていく有効な手段なのです。
少し視点を変えますが、ヤフーでは、1on1の全社導入と時期を同じくして離職率が下がりました。特に新卒社員の離職率は世の標準に比して極めて低いという事実もあります。
また、メンタル疾患による休職という課題にも改善傾向が見られます。もちろん、これらがすべて1on1のおかげだと言うつもりはありませんが、なんらかの好影響があるものと捉えています。
視野を広げて選択の幅をもたせる。そして、そこで得られた材料で熟考しながら、現状と理想の重なる部分を想像してみる。こうしたプロセスを自問自答だけで行うのと、誰かに関わってもらうのとでは結論が異なる場合があります。
部下にとっての1on1は、他者である上司を上手く利用して、自分の考えを深め、より鮮明にしていくための機会なのです。