自分自身の考えをしっかり言語化し今の仕事との接点を探っていく
上司:「さっき、コツコツタイプの仕事のほうが自分には合っているかもしれないとおっしゃっていましたが、どんなときにそう思うんですか?」
部下:「そうですね……、やはり運用業務の委託先と話しているときですかね」
上司:「なるほど。もうちょっと具体的に言うと?」
部下:「設計中の仕様案を説明しながら、どう安定運用させていくべきか打ち合わせをしていく中で、自分のほうでもいろいろアイディアが出てきて……、本当は先方に考えてもらうべきところなんですけどね。気がつくと、むしろ本業の仕様設計よりも熱くなっていることがあります(笑)」
上司:「へぇ、××(部下)さんが熱くなる? 常にクールに仕事しているイメージでした」
部下:「ええ、こうして思い出しながら話してみるまで、自分でも忘れていました」
上司:「ちょっと話が飛ぶようですが、××さんが、仕事をしていく上で最も大事だと思っていることは何ですか?」
部下:「え? 大事に思うことですか?…(沈黙)…手を抜かずにやり切ることですかね」
上司:「手を抜かないこと、ですか」
部下:「はい。あと、やっぱり、作ったものが世の中の役に立っていることは実感したい、ですかね」
上司:「なるほど。××さんのこだわりは、そこに通じてたんですね。役に立つものが作りたい、そのために手は抜かないと」
部下:「まぁ、そんなふうに表現するとカッコ良過ぎですが」
上司:「話を伺っていると、将来のキャリアパスとしては、仕事の領域を変えるという選択肢はありそうですね。ただその前に、今話してもらった××さんの価値観を、目下の仕事に照らしてみると、どのあたりに生かせそうですか?」
部下:「話してみて思ったのですが、自分には、仕事の領域意識が強く働いていたような気がします。要は優れたサービス作りに関わりたいわけで、今の立場からでも伝えられることはもっとありそうです。むしろ今の立場だからこそ言えることもあるのかなと。さらに、いずれ職域を変えるとしたら、なおさら今のうちにしか得られない経験をしておきたいなという気持ちになりました」
ヤフーでは、対話によるこうした内省プロセスに時間と労力を割くことが、当人にとっても、会社にとっても総じて有益であり、投資価値があるとされています。
確かに、盲目的に取り組んでやり遂げたほうが効率的な仕事もたくさんあります。しかし一方で、目や耳を塞いだままの生産性や創造性には限界を感じます。
社員一人ひとりが自分自身の考えをしっかり言語化し、現在関わっている仕事との接点を探っていく試みが、より高いレベルの成果につながると信じています。
ただ、この作業を孤独に自問自答だけで繰り返していくことは容易ではありません。だから、信頼して対話できる相手が必要なのです。その役目を職場の上司が担うことができればという理想が、ヤフーの1on1の根底にあるのです。
(ヤフー コーポレートグループ ピープルデベロップメント部 吉澤幸太)