物価上昇に加えて、忍び寄る世界恐慌の足音。庶民の懐事情はますます厳しくなるばかりだ。
そんななか、グルメ情報検索サイト最大手のぐるなびが、この秋、インターネット上で“ワケあり”生鮮品の安価での販売に乗り出す。
現在、担当者が、全国の農家や漁師、加工業者の元に、ワケあり商品を探す行脚をしている。
同社が求めているのは収穫や流通の段階で、ちょっと傷が付いただけで、廃棄される羽目になった野菜や魚、あるいは“消費者の要請”という名目から、商品としてふさわしくないと、最初から出荷されない商品の数々だ。
日本の生鮮品の流通では、少しでも傷が付いたり、色があせていると捨てられるケースが多い。スーパーマーケットの棚の都合で、サイズが決められるため、「販売用のトレーより小さい魚だけでなく大きい魚も、スーパーの仕入れ担当からは“いらない”と言われることもある」(魚介類卸業関係者)。
また、ある生産地では、高級キノコのバイリング(白霊茸)の収穫量の6分の1が「見た目が小さい」という理由だけで廃棄されている。しかし、味にはなんの違いもないという。
そのほか、クリの出荷で最も手間と時間がかかるのは「いが」を取り除くときだが、いがに覆われたままでも安ければいいという消費者もいるだろう。
このように流通経路に乗らない商品は数え上げたらきりがないが、ワケありだからといって、安全性に問題はない。
一方で、消費者の嗜好にも変化が見られ、色や形よりも中身を重視し始めている。ぐるなびはそこにビジネスチャンスありと判断したのだ。
ワケあり商品は不定期にしか登場しないものもあるが、「インターネットなら情報の更新が簡単に行なえる」(松井創・ぐるなび法人営業departmentプロモーションプロデューサー)。
ぐるなびの新サービスは飽食を享受してきた日本の食に、一石を投じるものかもしれない。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介)