後悔のない人生を送るために必要なことは何か?『「20代」でやっておきたいこと』など各年代の生き方を教示する川北義則さんと、12万部突破の『40代を後悔しない50のリスト』の著者・大塚寿さんが語る、後悔する人、しない人の小さくも大きな違い。
自分のテーマは「自分の外」にある。
仕事のなかに人生を入れるな!
大塚:私の『30代を後悔しない50のリスト』でも、「自分のテーマが見つからなかった」という後悔を紹介して、「自分の中」にテーマを見つけることの無意味さを書いたのですが、川北さんの最新刊『人生はすべて「逆」を行け』でも、「自分探しはがらくた探し」と書かれていますよね。
川北:「自分探し」という言葉は一見、格好いいかもしれないけど、いくつになっても、なかなか自分なんてわかるもんじゃないですよ。そんなことやっている暇があったら、仕事しろって言いたくなりますね(笑)。
大塚:確かにそうですね。自分の中を一生懸命探しても、結局見つからなかったという後悔は多くの諸先輩たちが経験しています。特に人生の土台をつくる30代に、自分が追い求めるテーマを見つけたいという願望は強いですね。川北さんがお書きになっていることと非常に似ていると思うのですが、私も後悔している人たちを目にして、「自分のテーマ」を自分の中に見つけようとしたことが、結果として見つからなかったのだと考えています。そうではなくて、テーマは「自分の外」にあるという認識を持って、他者と深く触れ合ったり、社会や組織と関わることで、行動の中から自然と生まれてくるものが自分のテーマなのだと。
成功したり失敗したり、素手で、ときには痛い思いをしながら試行錯誤していくなかで、「ああ、これが自分の生き方だったのかな」と、はじめて見えてくるものですよね。後悔していない人、つまり、自分のテーマを見つけられた人に共通するのは、必死に自分探しをしている人ではなくて、とにかく行動していた人だと思います。
川北:自分のテーマなんて、簡単には見つけられないですよ。特に男性はロマンチストだから、夢とか生きがいをみんな追うものだけれど、もしかしたら、その辺は女性にはわからないかもしれないですね。女性のほうがリアリストだから現実をちゃんと見ているけど、男性は夢ばかりずっと追っているということもある。いずれにしろ、そんなに真剣になって探したって見つかるものじゃないですよ。
大塚:ただ、見つけることは本当に難しいですが、「出合う」ことはあると思うんです。ある瞬間に、「ああ、これだ」というように。たとえば、私の場合でいうと、営業というジャンルの中で、「法人営業」を極めようという瞬間がありました。最初は自分の進む道がわからなかったけれど、いろいろな世界に挑戦していくことで、自分の得意不得意がわかってきて、あるとき「法人営業」が自分の生きる道なんだ、自分が一番やりたいことだったんだと、わかる瞬間というのがありました。
川北:なるほど。確かにそういうことはありますね。人生のテーマというのは、20代や30代から芽生えてくるから、まずはいろいろと挑戦してみることですね。大学を卒業して就職して数年くらいじゃ、何がやりたいかとか、自分はどういう人間になにたいのかなんて、わかるわけないですよ。わからないのが当たり前であって、仕事をしたり、現実の世界で揉まれていくうちに、「ああ、私はこれをやってみたいな、これで行こう」と、自分の方針が決まってくるんですよ。それがだいたい30代ですかね。だから、自分の方針を見つけようと思ったら、早いうちからいろいろと行動してみることですね。
大塚:やはり重要なのは行動ですね。考えても結論なんて出ないのだから、うんうんうなって考えているばかりだと、自分の経験に裏打ちされていないですから、結局は周りの意見に流されてしまうだけですよね。
川北:流されるでしょうね。そうやってずっと流されていって、気づいたら定年になって、自分のやりたいことなんてなくて、何のために働いていたのかもよくわからなくなってしまうんです。生活のためだけに働いている状態になってしまいますよ。でも、仕事というのはそういうものじゃないですよ。人生というのも、そういうものじゃないです。だから、僕は「人生のなかに仕事を入れてもいいけど、仕事のなかに人生を入れるな」とよく書くんですよ。
大塚:「人生のなかに仕事を入れてもいいけど、仕事のなかに人生を入れるな」。いい言葉ですね。
川北:うん。人生の中には当然、仕事が入ってくる。それは構わない。だけど、仕事の中に人生を入れちゃいけない。自分の意思で積極的に行動していないと、周りに流されてばかりで、結局その人の人生はただ会社に通って仕事をしているだけの人生になってしまうんですよ。もちろん、人生というのは仕事だけじゃないですからね。