自分で目標を設定し
小さな成功体験を積み重ねること

大塚:目標を立ててクリアするというのは、モチベーションが高まりますよね。大きすぎる目標だとあまり現実的じゃなかったり、途中で面倒になったりすることもありますが、定期的に結果のわかる小さな目標を設定しておけば、達成できたりできなかったりがはっきりとわかりますから、それが結果的に仕事を楽しくすることにつながりますね。目標を立てようと思ったきっかけみたいなものはあったんでしょうか?

渡辺:せっかくやるなら結果を出したい。だから、たとえばいまは本のプロデュースも手掛けているんですが、本を出すこと自体に意味はないと思っていて。せっかく出すなら、たくさん売りたいと思うんですよね。たとえばスイーツにしても、つくること自体に意味はなく、多くの人に支持されるものにしたいって思うんです。せっかくやるならすごく話題にしたいですし。

『CanCam』という雑誌をやっていて、何が楽しかったって、「いまの子が求めているものが何か」ということをたくさん考えて、「これが欲しいよね」というものをそこから見つけ出して、それを「こうやって見せてあげたら、きっとみんな飛びつくよね」と考えて、誌面に出したときに、ばーっと売れたりする。そういう現象を創りだすのが、楽しくて仕方ありませんでした。何かをつくることに意味があるんじゃなくって、世の中を動かすことができること、それが楽しかったんです。

30代は仕事とプライベートを線引きしない!<br />「楽しむ工夫」が人生を大きく変える<br />渡辺佳恵×大塚寿 対談【前編】大塚寿さん

大塚:『CanCam』はすごい影響力だったでしょうね(笑)。大きなブームを作り出したわけで、70万部もの雑誌だと、確かに世の中も大きく動きますね。

渡辺:たまたま15年くらい雑誌という世界でやってきたのが、いまはたとえばプロデュースしているお店だったり化粧品だったり本だったり、媒介するモノが変わっているだけで、私の中でやっている作業としては何も変わらないんです。「支持されたい」「売りたい」というモチベーションがずっとあって。小さなところで言うと、自分がやった企画が、「よかった特集」の5位以内に入って「やった」と思う、そんなことをずっとずっとずっと積み重ねてきた。だから、小さな成功体験の積み重ねが、最終的には雑誌1冊をやりたくなってしまったし、そのあとは雑誌じゃなくてもっと広い世界でやりたくなってしまって、それで2006年に会社を離れて起業したんです。

大塚:そうなんですね。渡辺さんは、与えられたものではなく、自分で目標を設定されていますよね。自分でルールを決めて、それをクリアすること自体を楽しんでいる。ビジネス書なんかでよく言われている言葉でいうと、「自走式」ということだと思うんですよ。自分で目標を見出して、自ら走ることができるという。自走式だと、自分で決めたことだからより楽しむことができるし、目標を達成したらさらにワクワクするという、いいサイクルになわるわけですね。

30代を後悔しない50のリスト』でも、30代は人生でもっとも差が開く10年と書いていますが、自走できるかどうかでも大きな格差が生まれると思います。最近よく言われることに、この「自分で走れない人」が多くなっているというのがありますよね。そうすると、なおさら自走できる人が優位になるわけです。30代を自走式で駆け抜けた渡辺から見て、自分で走れない人に何かアドバイスはありますか?

渡辺:私の周りにも、やはりそういう子がたくさんいるんですが、なんで自分で走れないんだろうって思います。小さな成功体験や、それに裏打ちされる自信がないんでしょうね、きっと。私、『CanCam』のライターになって一番最初の企画を担当したときに、編集者に「こんなに時間かかって」って、泣くほど怒られたんです。それでも、最初の新人ライターなのに「よかった特集」の2位だったんですよ。

大塚:すごいですね。

渡辺:そのときにすごくうれしかったんです。ずっと結果を出していればいいんだ、絶対に結果を出してやろうって思ったんですよね。何かをして喜びを感じると、人は同じことをしたがるもの。快感になりますし、また味わいたいと思いますよね。アドバイスするとすれば、その何度も味わいたくなることを、何か小さなことでもいいので持つということでしょうか。そうすると、人間って欲深いので、もっと大きい快感が欲しくなるんです。人間の原動力は「欲」だと思うんですけど、自走できない人はその欲が足りないのではないでしょうか。(後編に続く)

12万部のベストセラーとなった『40代を後悔しない50のリスト』に続く[30代編]として、大塚寿さんの新刊『30代を後悔しない50のリスト』が発売されました。前作同様、1万人のインタビューを通してわかった等身大でリアルな50個の後悔から、明日を確かに生きるヒントが見つかります。人生の土台となる30代。格差の生まれるこの10年をいかに過ごすべきかを、本書から学んでみてください。

30代は仕事とプライベートを線引きしない!<br />「楽しむ工夫」が人生を大きく変える<br />渡辺佳恵×大塚寿 対談【前編】

 

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大塚寿[著] 定価1500円(税込)
ダイヤモンド社
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 【特別対談の日程
●第1回:「藤原和博×大塚寿」(前編)
●第2回:「藤原和博×大塚寿」(後編)
●第3回:「川北義則×大塚寿」(前編)
●第4回:「川北義則×大塚寿」(後編)
●第5回:「桑野克己×大塚寿」(前編)
●第6回:「桑野克己×大塚寿」(後編)
●第7回:「渡辺佳恵×大塚寿」(前編)
●第8回:「渡辺佳恵×大塚寿」(後編)(11/11)