Facebookの創業者にも「権力」はない
僕自身、会社で朝から晩まであくせくと働き、わずかばかりの財産を持つようになると、おもしろいことに気がつきました。資本主義社会では、時に成功者には莫大なお金が舞い込んできます。しかし、よく考えてみると、その金の力たるや非常にか弱いものなのです。
ある程度以上のお金を得ると、お金にできることというのはまったくもって大したことがないことがわかってきます。毎日フランス料理のフルコースを食べるわけにはいかないし、たとえ食べたとしてもせいぜい一食数万円の世界です。大きすぎる家は不便で、逆に住みにくかったりします。プライベート・ジェットだって、飛行機の中で寝るだけだったら、ビジネスクラスとそんなに変わらないでしょう。
つい最近、20代で世界有数の億万長者になったFacebookの創業者の私生活がインターネットで話題になりました。それを見ても、お金ってあんまり大したもんではないんだな、と思わずにいられませんでした。
ブルージーンズにスニーカーを履いて、僕たちとあまり変わらない生活をしています。資本主義社会の頂点に君臨するこの20代の若者の生活と、市民を殺したい時に虫けらのように殺せた社会主義国家の指導者たちの権力を対比させると、そのちがいに愕然とします。
大金を手に入れただけでは飽き足らない資本主義社会の一部の成功者たちは、自然と社会主義社会の支配者たちが持つ権力に惹かれていくのかもしれません。
資本主義社会の中では、成功者は常に新規参入者におびえ続けなければいけません。自分よりもすぐれた者が現れれば、とたんに自分の成功者としての地位が脅かされます。資本主義社会では「現在進行形で」優秀な者しか認められないのです。
このように考えると、じつは資本主義社会の成功者、そして既得権益者たちこそ、さまざまな規制を作ったりして、自由市場の競争を制限しようというインセンティブが働くことがわかります。