湯浅誠氏と「連合」の奇妙な連帯

 また、既得権益者たちと、資本主義社会の競争に敗れた者たちが、じつに奇妙な形で連帯をはじめるのです。

 僕は「年越し派遣村」で有名になり、菅直人の肝いりで内閣府の政策参与になった、市民運動家である湯浅誠氏が、大企業の正規社員の利益団体である日本労働組合総連合会と同じ主張をその口から語りだした時は非常に大きな違和感を感じました。

 なぜかこの市民運動家は、企業の正規社員のさらなる保護と、派遣社員のような雇用形態の禁止を訴えていたのです。派遣村のように、ホームレスの人たちへ炊き出しをしたりするボランティア活動は素晴らしいことだと思います。

 しかしホームレスの人たちを助けることと、派遣社員を規制して大企業の正社員の権利をさらに強化することとはまったく結びつきません。
  それどころか非正規社員の待遇の悪さは、正規社員の法的な保護とコインの裏と表の関係があるのです(第1回参照)。

 既得権益者たちは巧妙に市場経済の競争に敗れた者たちのルサンチマンに忍び込み、自らの権益を守るためにけしかけるのです。そして弱者たちは本当の敵を、また本当に守らなければいけないものを見失うことになります。

 社会主義的な識者たちから、とかく攻撃されがちな金融というものは、資本主義経済では極めて大きな役割を担っています。洗練された資本主義社会では、まったくお金がない者でも、すぐれたアイデアと才能があれば、必要な資金を集めて起業することができます。こういったことを可能にするのが金融なのです。