既得権益者に嫌われる「金融」と「市場」
金融というのは社会を進歩させる大きな力を持っています。そしてその大きな力ゆえに、既得権益者の攻撃の的になります。一ベンチャー企業の若い経営者が、金融の力を借りてテレビ局を買収しようとした時、いったいどういうことが起こったのか思い出してみれば、このことは明らかでしょう。
フェアでオープンな市場、というのはさまざまな既得権益者たちに常に脅かされています。いったん勝者となった者が競争を取り除き、自分たちの既得権益を守ろうとさまざまな政治的手段を駆使して、市場のルールをねじ曲げていくからです。
金融というのは、資金のない新規参入者に、こういったエスタブリッシュメントに挑戦するチャンスを与えるのですから、既得権益者が本能的に嫌うのは当然でしょう。
民主党政権は、日本郵政を国有化し政府自らが巨大な金融機関を運営しようとしています。経営破綻した日本航空を税金で救済して、航空産業さえも国有化しようとしています。さらに社内失業者に補助金を出したり、就職できない新卒を雇うことに補助金を出したり、企業が誰をどのように雇用するべきか指示をしはじめました。
また一部の国会議員や経済評論家は、日本銀行に株や不動産や中小企業への債権などを買わせようと、執拗に圧力をかけています。日銀という政府の機関で働く公務員に、金融業を営めとでもいうのでしょうか。
さらに、2011年8月には、政府が決めた値段で太陽光発電の電力を強制的に電力会社に買い取らせる法律が作られました。電力価格の統制を強く主張していたのが、日本で大成功した資本家だったりします。今こそ電力の自由化が求められているにもかかわらず、です。
こうしてオープンでフェアな自由市場がどんどん毀損され、政府が肥大化し、日本という国が社会主義へ向かっていることに、僕は大きな恐怖を感じています。
日本のような民主主義国家で、資本主義を守ることができるのは、結局のところ、僕たち一人ひとりだけなのでしょう。そのことを少しでもみなさんと共有したいと思い、僕はこの本を書きました。
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