この記事を執筆した11月2日の夜、野田首相はG20首脳会議に出発しました。消費税を2010年代半ばまでに10%に引き上げることを国際公約として表明し、巨額の財政赤字からの脱却をアピールするようです。この方針は、経済学的視点からみてもまったく正しいものです。今回はその理由を詳しく解説しましょう。
日本を脱出する高額所得者たち
日本の税制は法人税と高額所得者に対する所得税が世界最高水準で、その代わり消費税が非常に低いという特徴があります。とりわけ他のアジア諸国と比べて法人税が圧倒的に高く、現在急速に成長しているアジアのマーケットにおいて、多国籍企業の中枢機能は東京から香港やシンガポールに移っています。
また、金融やITなどの高付加価値で場所を選ばない職種では、やはりアジアで活躍する高額所得者が東京から香港やシンガポールに流出しています。
日本は消費税率を上げ、法人税を香港やシンガポールなみに下げ、所得税の累進性を緩和することが急務です。ヒト・モノ・カネが自由に行き交うグローバル経済の中で、高収益な多国籍企業や、多くの価値を生み出す高額所得者を冷遇していては、金の卵を生むガチョウを自ら他国にゆずってしまうのといっしょです。
日本の深刻な財政赤字は、確かに政府部門のムダもありますが、大きな要因は単純に社会保障費に対して税収が少なすぎることです。これは非効率でアンフェアな社会保障費をカットして、効率的で簡素なセーフティネットを新たに構築することで解決しないといけません。
増税する場合は消費税しか選択肢はありません。その理由をいくつか説明します。