金融庁の銀行監督の方針(いわゆる「森ドクトリン」)にもあるように、地方銀行の改革が待ったなしだ。新しい「金融行政方針」も発表された。さっそく、筆者が現在(第二地銀を含め)106ある地方銀行の企画担当者だったら、こういう次期の中期経営計画を立てるだろうなという概案を、27年間銀行に勤務し、特に企画部にも勤務してきた経験も踏まえて、あくまで勝手にではあるが書いてみたい。
◆環境認識
日本経済は少子高齢化に基づく縮小に向かいつつある。特に地方経済は、人口減少・流出と相俟って将来の展望が描きにくい状況にある。地方の経済成長率の低下は、銀行の預金・貸出の収益を低下させた。
さらに、アベノミクスの一環である量的金融緩和において、マイナス金融政策を始めとする低金利誘導によって、銀行の収益は大幅に低下することになった。実際、最近では貸出には地銀においては預金の約7割程度しか回っていない。
残りの約3割は国債を中心に運用していたが、低金利・マイナス金利のため対象から外さなくてはならなくなった。そこで米国やフランスを中心とした外貨建ての債券を運用対象にするなどしたが、それもリスク管理の観点で自己資本比率からの制限が掛かった。
結果的に、経営環境が厳しくなり、地方銀行のすでに半数以上が貸出や手数料収入などの「本業」部分ですでに赤字に落ち込んでいる。以前より保有している債券や株式の売却によって、かろうじて最終黒字を出している状況だ。
◆公的レポート
最近、IMF(国際通貨基金)、日本銀行、そして金融庁のレポートも日本の銀行の収益性の低さを指摘し、中には全行が生き残ることはできない、などとの記述まである。
とくに監督官庁である金融庁のレポートには重みがある。また日本銀行も、物価の管理と金融システムの安定を業務としており、当座預金を開設している関係から、民間金融機関の経営にタッチしている。金融システム不安は決済機能を持つ銀行の課題である。