理容業界のコンサルは厳しい

立三さんは返事をせず、そのまま目を閉じたが、「髪を洗います」と声をかけると、素直に洗髪台に頭を突っ込んだ。

「ホーッ!頭を洗ってもらうのって、なんでこんなに気持ちいいんかな」と立三さんはしみじみと言った。

オレは、濡れた髪を拭き、ドライヤーで乾かし、最後の仕上げをした。

髪をセットすると、どのお客さんもそうだが、どこか澄んだ表情になる。

立三さんも例外ではなかった。

そして、他の客と同じように、鏡の中の自分を満足そうにじっと見つめた。

全ての男が最もナルシストになる瞬間だ。

「イケメンすぎるって罪やな」立三さんはそう言って、ハハハと笑った。

オレもつられて笑った。

――アドバイスをもらうのはダメなのかな……。

立三さんはオレを見て、少し悲しそうな視線を投げかけ、ポソリと言った。

「でもな、この業界、なんぼ腕のいい経営コンサルタントがついても厳しいぞ。〈プロダクト・ライフサイクル〉らしいものも存在しないからな」