映画『ミリオンダラー・ベイビー』に学ぶ

「ダメっすか?」オレはもう一度、頼んでみた。

立三さんは、オレを見て黙り込んだ。

そして、しばらく考えた後、「『ミリオンダラー・ベイビー』っていう映画見たことあるか?」と尋ねた。

「インドの子どもがクイズに出る話ですよね」

「ちゃう。それは『スラムドッグ$ミリオネア』や」

「あ、そうか」

「『ミリオンダラー・ベイビー』ってな、女のボクサーがクリント・イーストウッド扮するトレーナーに弟子入りする話なんや。優秀なボクサーを大勢育てた伝説のトレーナーなんやけどな、頑固で、口下手で、育てたボクサーたちには逃げられてばっかりや」

オレはそのまま話を聞いた。

「でな。女のボクサーが弟子にしてくれと訪ねてきた時、そのトレーナー、最初は断るんや。でも、女のボクサーは必死で弟子にしてくれて頼みよる。そしたら、根負けしたトレーナーが弟子にする条件として、『オレの言ったことを必ずやること、どうしてやるのかは聞かないこと』って言うんや。そして、女のボクサーは言われたとおりやってチャンピオンになるという話や」

「はい」

「そういうやり方やないと無理や思う、理容室を何とかするのは。それでもなんとかなるかどうか……それでもやるか?」

「はい。ぜひ、お願いします」

オレはペコリと頭を下げた。