「東レよ、お前もか」財界総理出身企業も落ちたデータ改ざんの闇日本を代表する超優良企業として、ダメージ・コントロールの“巧みさ”を見せつけた会見だった。左端は、現在の東レの顔である日覺昭廣社長 Photo by Hitoshi Iketomi

 ほんの一瞬だった。

 11月28日、子会社における製品検査データの改ざんに関する緊急記者会見に臨んだ東レの日覺昭廣社長のマイクを持つ右手の動きがぶれ、左右の目をしばたたかせた。

 記者団から「いつ、日本経団連の榊原定征会長に具体的な報告をしたのか」と問われた時だった。榊原会長は、東レの社長・会長・最高顧問を歴任した“かつての顔”であり、2014年からは財界総理である経団連の会長を務めている(現在は東レの相談役でもある)。

「昨日(27日)です」

 常日頃から、歯に衣着せぬストレートな発言で知られる日覺社長が、さもばつが悪そうに答えたのには理由がある。

 実は、前日の27日の日本経団連の記者会見で、神戸製鋼所や三菱マテリアルなどで不祥事が相次いでいることについて問われた榊原会長は、「日本の製造業全体の信頼が揺らぎかねない」という趣旨の強い懸念を示したばかりだったのだ。榊原会長は、記者会見の終了後に初めて東レの幹部から具体的な内容を聞かされたのだという。