「ストーリー」に添ってリポートはつくられる
たとえば、本社中枢において、世界中の工場の生産性を一律〇〇%上げるという目標を立てたとします。
当然、順調に生産性を向上させる工場となかなか成果の上がらない工場が生まれますから、本社は生産性の上がらない工場に対して、その理由と改善策をリポートするように要請するでしょう。ところが、現場からのリポートはどうにも要領を得ない。いくらそのリポートを読んでも、何が問題で、どう改善すればいいのかが明確にならない。そこで、業を煮やしたリーダーが、本社スタッフに現地に行って調査したうえで、リポートをまとめるように指示するわけです。
このようなケースにおいて危険なのは、本社スタッフが、生産性を順調に改善している別の工場の取組内容を知っていることです。彼らは、それが「答え」だと思ってしまう、または、それが「答え」だと決め打ちしてしまう。その工場でやったのと同じことをすれば生産性が上がると考えてしまうのです。
その結果、何が起こるか?
本社スタッフが、成功事例から導き出したストーリーに添った資料を現場に要求。現場が「資料提供係」になってしまうのです。つまり、現場の複雑さに向き合うことなく、もともとあるストーリーを成立させるために必要な資料だけが収集され、それ以外はすべて切り捨てられてしまうわけです。
このプロセスを辿れば、誰がやっても、理路整然としたリポートができるに決まっています。しかも、成功事例をベースにしたストーリーですから、一見、説得力もある。こうして、リーダーは“騙される”わけです。