「優れたリーダーはみな小心者である」。この言葉を目にして、「そんなわけがないだろう」と思う人も多いだろう。しかし、この言葉を、世界No.1シェアを誇る、日本を代表するグローバル企業である(株)ブリヂストンのCEOとして、14万人を率いた人物が口にしたとすればどうだろう? ブリヂストン元CEOとして大きな実績を残した荒川詔四氏が執筆した『優れたリーダーはみな小心者である。』(ダイヤモンド社)が好評だ。本連載では、本書から抜粋しながら、世界を舞台に活躍した荒川氏の超実践的「リーダー論」を紹介する。
コミュニケーションとは、「伝える」ことではない
「言葉」は、リーダーの重要な武器です。
常日頃からどういう言葉を口にしているかはもちろん重要ですが、要所要所でどのような言葉を打ち出すかによって、チームの盛衰は決すると言っても過言ではありません。明確な方針・戦略を伝え、メンバーの士気を高める。そんな言葉を打ち出すことができるかどうかで、リーダーの力量は測られるのです。
ところが、ここで勘違いをするリーダーがいます。「伝えたいこと」「伝えるべきこと」を伝えることに終始してしまうのです。特に、「リーダー=上に立つ者」という誤解をしている人はこの傾向が顕著。「下」にいる者は「上」の発する言葉を受け止めなければならないと考えているために、独りよがりな言葉を発して平然としている。そして、「下」がその言葉に従わなければ、自らを省みることなく「下」を責める。結果、チームの士気は落ち、機能不全へと向かっていくのです。
コミュニケーションとは「伝える」ことではありません。
「伝わった」ときに、はじめてコミュニケーションが成立したと言うことができるのです。これは、あらゆる人間関係において当てはまる真理。リーダーがメンバーと向き合うときも、絶対に守らなければならない原理原則なのです。
だから、言葉を考えるときには、必ず「相手」の視点に立って考えなければなりません。自分が言いたいことをそのまま言葉にするのではなく、相手に理解しやすく、記憶に残りやすく、実行に移しやすいように工夫をする。リーダーが言葉を発するときには、このプロセスに細心の注意を払わなければならないのです。