開発から製造、販売まで
一気通貫で支援するVC

 一般的に、グーグルやフェイスブックのようなインターネットサービス(ソフトウェア)の開発よりも、iPhoneのような実物(ハードウェア)の開発・製造の方がリスクは高いといわれる。

 実際に試作品を作り、工場を動かして流通網を整えないと製品が売れないためで、その分、初期投資が掛かる。当然、スタートアップにとっては、ソフトウェア開発よりハードルが高い。

 そこに着目したHardware Clubは、ハードウェア製造に特化した起業家の支援を行っている。世界30カ国350を超えるスタートアップをつなぎ、専用のコミュニケーションツールを用いて、ノウハウを共有。機密情報も含めて、情報交換ができる環境を築いたのだ。

 コミュニティの中には、開発したハードウェアを生産・販売する段階になって必要となる約120のパートナーが加わっている。例えば、台湾の鴻海科技集団(フォックスコン)といったEMSメーカーや、世界中の販売代理店だ。また、イギリスの老舗高級百貨店ハロッズでは、実際の製品を展示している。

Hardware Clubのキラン・プラディープ氏 Photo by T.K.

 つまり、ハードウェアベンチャーが苦労する、製造過程と販売・流通過程を補い、「一気通貫」で支援する仕組みをあらかじめ用意しているのだ。さらに、常に多言語が飛び交うグローバルなコミュニティでもあるので、互いの言語サポートを受けられるだけでなく、市場進出においても「日本では取り扱い説明書が必要」といった“かゆい所”に手が届く情報まで得られるのだ。

 Hardware Clubは、厳選されたスタートアップの中から、自身もVCとして一部の企業に投資を行っている。とはいえ、運営の難しさはないのだろうか。

 コミュニケーション・ディレクターのキラン・プラディープ氏は「信頼関係をベースに、皆が意見できる環境を整え、活発なやりとりを促している。特に投資による優劣や上下関係を付けないように配慮している」と話す。

フラットな関係性が
起業家の元に良い人材を招く

 つまり、フラットな関係を築くようにして、コミュニティを活性化させているのだ。それもあって、クラブ内の人が、新たな人を呼ぶ仕組みになっている。良い起業家の元には良い人材が集まり、さらにそれが良い人材を招く。そして互いに切磋琢磨して成長していく。こうして、強固なコミュニティが築かれているのだ。

 フランスには、シリコンバレーのようなエコシステムができていないからこそ、明確な目的を持った人が集まってフラットな関係を構築することで、セーフティーネットの役割を果たすコミュニティが存在するわけだ。それは前回(リンク挿入)紹介したStation F(ステーションエフ)のような巨大施設とは異なり、より目的や役割が細分化されている。

 さて、フランスはもともと数学に強みがあり、研究者やエンジニア層が厚い。つまり次に「宝」となる技術は、研究者の手にあるのだ。次回は、そんな"眠れる"研究者を起こそうとする組織Hello Tomorrow(ハロー・トゥモロー)を紹介しよう。