景気拡大が「いざなぎ景気」を超えて戦後2番目に。株価も25年ぶりの高値をつけた。正社員の有効求人倍率も1.0を超えたし、平成30年春新卒採用の大学生内定辞退率も、6割を超える64.6%で過去最高だ。数字だけを見れば明らかに景気は良くなっているが、その一方で、「実感なき景気回復」と言われる。「儲かっているのは大企業と金持ちだけで、一般の人間には無関係」という声もよく聞く。
いったい景気は回復しているのかしていないのか、よくわらかない局面だが、実のところ、バブルは来ていると感じている。僕はエコノミストではなくてマーケティング屋なので、世の中の動向を探る場合、経済指標的な数値も確認のために参考にはするが、どちらかと言えば世の中の「現象」を重視している。景気というものは空気感だし、経済の実態から乖離して拡大する場合もある。だからバブルも生じるわけだが、その空気感は数字より先に現象となって表れるからだ。というか、数字に表れる前に実感として感じ取れなければ、マーケティング屋として負けである。
そんなマーケティング屋の実感として、今はバブルが来ているなあと思う「現象」も生じている。今回は、その現象について述べたいと思う。
景気回復の実感が
なかなか湧かないワケ
まず、バブル時代をリアルに体験した世代として、なぜに戦後2番目の景気拡大局面でも実感が湧かないのかを説明しておこう。株価が上昇しても、大企業が過去最高益を上げても、庶民の生活はいっこうに良くならないとよく言われるが、その理由については、実はあまり正しくは語られていないからだ。端的に言えば、景気回復の実感が湧かないのは、企業が経費を使わない、社員が使えないからだ。
よくある誤解に、「バブル期はサラリーマンの給料もどんどん上がっていたから景気がよくなった」というものがある。たしかにバブルの頃はボーナスも良くて、僕の後輩も入社1年目のボーナスが200万円も出たという話も聞いた。銀行のOLのボーナスが100万円あったという話もよく聞く。しかし全体として見た場合、バブル時代でもそれほど給料は高かったわけではない。
たしかに日本では、長期的に平均給与は下がっている。しかし、大して下がっているわけではないし、実はバブル時代よりも上がっている。こちらの資料によれば、バブルど真ん中の1988年の平均給与は384万円。それに対して2016年は421万円だ。平均給与が最高だったのは1997年の467万円で、そこから比べればたしかに下がってはいるが、世の中はデフレが続いていたので、実質賃金はそれほど下がっていないと言える。
長銀や山一證券、拓銀などが破綻し、日本経済が未曾有の危機を迎えていた97年頃に平均給与が高かったのは、給与が高く人数も多かった団塊世代のリストラが進んでいなかったという理由もあるだろうが、それ以降の大卒初任給の推移を見ても下がっていないし、物価を考慮した場合、実質賃金はむしろ上がっている。
つまり、給料が上がらないから景気が良くなっていないという議論は実態と矛盾している。では、なぜ一般の庶民には景気回復感がないのか。バブル時代と今とでは、何が違うのか。それは「企業の経費の使い方」だ。