全日本空輸(ANA)の機材計画見直し作業が大詰めを迎え、エアバスの超大型航空機「A380」を導入する方向で最終調整が進められている。

 同社は今月3日、大型機購入を検討する選定委員会を社内に設置した。決断の選択肢は「A380導入」「B747改良型のB747-8導入」「新型機導入を見送り、既存のB777で対応」の3つである。

 同社はボーイングの中型機B787のローンチカスタマー(最初の顧客)として50機の大量発注をしたが、ボーイングの開発が大幅に遅れ、納期予定の今年5月から1年半も延期された。

 加えて、発注分のうち30機を占める国内線や近距離国際線に適した短距離用B787-3の開発は、実質停止の状態。燃油費高騰が続くなか、燃費効率に優れた新型機で世界の同業他社から頭一つ抜け出すはずだったANAの目論見は、大きく崩されたのだ。

 小型機は737、中型機は787、大型機は777とボーイング3機種へ集約させるというこれまでの機材計画を見直す必要に迫られるなか、有力候補になっているのがA380の導入だ。

 A380の就航候補は、たとえば搭乗率が高い成田~ニューヨーク線。当初はB787を投入して1日1便から2便に増便する計画だった。代わりに既存機材で4機体制を編成しても、パイロットなど人件費がかさむぶんを燃費効率改善でカバーできない。これに対して、A380であれば2機で対応できる。

 ただし、「2010年のタイミングでA380が手に入るのが理想」(ANA首脳)であるものの、今からの発注では納期は12年頃になるという現実がある。

 日本市場を開拓したいエアバスがどんな条件を提示してくるか。エアバスへのシフトの可能性を示唆されたボーイングがどこまで納期遅延の損失補償と挽回プランを約束できるか。年内に再策定するANAの機材計画をめぐり、熾烈な駆け引きが繰り広げられる。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)