各国のエリートと肩を並べて負けないために

 実際、それは仕事でも痛感することになる。小出氏が配属されたのは、本社のコーポレートストラテジーだった。世界中から集まった各国のエリートたちと戦略部門で仕事をすることになったのだ。

「配属された部門には、日本人は僕しかいませんでした。他にはイタリアやドイツなど、いろんな国から来ていた。しかも、コンサルティングファーム出身者や、ITは知らないというメンバーもいた。まったく違う文化観や価値観を持つ人たちの集まりの中にいて、全員でディスカッションをするんです。こうなると、彼らが育ってきた風土や文化、歴史をお互いに知らないとコミュニケーションにならないんです」

 さらに、MBAホルダーがいたり、高いディベート能力を持っていたりするメンバーもいる。そうなれば、圧倒されてしまう。

「それはもう、本当にすごいですから。ただ、そのすごい部分以外でもすごいのかというと必ずしもそうではないわけです。僕が改めて思ったのは、相手のことを知ると同時に、自分の強さや良さを理解しておかないといけないということでした。それができていないと、圧倒されるだけになってしまうんです」

 たしかにディベートが得意な人たちもいる。しかし、しっかり物事をやり遂げることが得意な人も必要なのだ。

「そういうお互いの強さをお互いにしっかり理解していないと、単なるエゴのやりとり、言葉のキャッチボールに終わってしまいかねない。ディスカッションが空回りしたまま前に進んで行かないんです」

 これが、グローバルコミュニケーションの難しさではないかと感じたという。しかし、ヒントは意外に身近にある。自分自身を理解することだ。