第6回目は英語を使ったグローバルコミュニケーションの極意をテーマに外資系トップの言葉をご紹介する。何よりも信頼を大事にしていると語るベーリンガーインゲルハイム ジャパンの鳥居正男氏にご登場いただく。
グローバルコミュニケーションでいかに信頼を獲得するか、という点で示唆に富んだ話を語ったのが、ベーリンガーインゲルハイム ジャパンの鳥居正男氏だ。
2010年に創業125年、本年に日本での活動50周年を迎えている同社。医療用医薬品、アニマルヘルス等に加え、コンシューマヘルスケアのエスエス製薬も傘下に持つ。グループ3000人を率いているのが、鳥居氏である。64歳。静かな語り口の紳士だ。
常務取締役を務めた日本ロシュに22年勤務し、ローヌ・プーランローラー、シェリング・ブラウ社長を経て、2010年から現職を務める。
英語は得意科目
ところがビジネス議事録は修正で真っ赤
「高校のとき、担任が英語の先生でしてね。熱心に教えてくださったこともあって、英語は得意科目でした。もっと英語を学んで、将来は語学を生かして仕事をしたい。そんなふうに思っていました」
大学時代はESS(イングリッシュ・スピーキング・ソサエティ)に参加(実は鳥居氏はここで大きな挫折を経験している)。卒業後、アメリカに留学し、日本ロシュに入社する。後に社長になる人物のアシスタントに抜擢され、経験を広げる。担当部門のない仕事を次々に引き受け、夜中の1時、2時まで働く日々。社内ではワーカホリックで、さらには仕事ができる若手社員として有名だったという。
「ただ、直接ガツン、と鼻を折られることも少なくありませんでした。後にアメリカに駐在したときには、私の書いた会議の議事録がアメリカ人の上司に真っ赤に朱入れされて戻って来ました。日本では英語が一番うまい、なんて思っていたのに、ポッキリと折られましたね。日本ロシュに入ったとき、ビジネス英語は普通の英語とはまったく違うと気づいて懸命に勉強したんです。ところが、アメリカではそれが通用しなかった。読んでみると、なるほどな、という英語なんです。難しくないけれど、言い回しが違う。生きた英語でした」