世界と同じではない
自分の価値はどこにあるのかを見極める

「僕は、営業という現場出身者でした。しかも、アジアの代表。ですから、現場をマネージしてきた人間から言わせてもらうと、現場はこうだ、お客さまはこうだ、競合他社はこうだ、と現場に近い視点からディスカッションで意見を出すと、まわりもちゃんと聞いてくれるんですね。なぜなら、例えばコンサルティングファーム出身者は、そういう現場を見たことがないわけですから」

 つまり、このディスカッションの中で自分は何で勝負すべきなのか、という自分のそのときそのときの価値を常に考えて、言葉を発信することが重要になるということである。

「単に英語がしゃべれるとか、ディベートがうまいとか。そういうところの勝負ではない。誰もそこに期待はしていないんですよ。日本人には(笑)」

 そしてこのとき、グローバルで働くことの面白さにも改めて気がつくことになったという。

「価値観の異なる、いろんな人たちがひとつのチームになるからこそ、面白い化学反応が起きる。そうすることで、爆発力を持ってゴールに向かえる。だからこそ、大きな成果を出すことができる。同時に自分も高められるし、自分も深められるようになるんです」

 グローバル人材に求められるのは、まさにこの意識ではないか。多種多様なグローバル人材の中にいて、自分の価値、自分のやるべきことを見極め、実行できることだ。間違っても、グローバルに溶け込むことでも、グローバルと同じことをすることでもないのである。そしてこの意識が持てれば、自分を客観視できるようにもなる。

「日本は今、極めてシビアな目で世界から見られています。本当にこの国に、これから投資していいんだろうか、と全世界が思っている。これが、グローバルカンパニーにいると見えてくる、日本のリアリティなんです。これをもっともっと多くの日本のビジネスパーソンたちが理解しないといけない。ではどうするのか、という次の一手を打たないといけない。何もない無策のままで行けば、極めて危機的な状況を迎えます。この状況を本当に理解して、国や企業を変えよう、救済しよう、と誰がしているでしょうか。これは、世界を知ると見えてくる危機感なんです」

 

 


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