今年はインフルエンザワクチンの製造量が減って各医療機関で不足気味となり、13歳以上の任意接種については「原則1回接種とし、2回接種は控えてほしい」旨を厚生労働省も通知する事態となった。その原因には、一般的にはあまり知られていない意外な原因があった。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
効くはずのワクチンが効かなくなる
「卵馴化」という大問題
「今年度のインフルエンザワクチンの製造量は2528万本で、昨年度の使用量2642万本を下回り、過去5年間で最も少ない。ゆえに、希望した人たちに行き渡らせるための対策として、13歳以上の任意接種については、原則1回接種とし、2回接種は控えてほしい」…的な通知を厚生労働省が行ったのは10月6日のことだった。
でもなぜ、昨年より製造量は減ってしまったのか。
「今期はワクチンの製造に使用する株が製造過程で変更となり、すでに製造に入っていた分が使えなくなった。最終的な株の決定もずれ込んで、各メーカーの製造開始も遅れた」のが原因というのだが、そもそもどうして、株を途中で変更したり、すでに作ったものが使えなくなったりするのだろう。なぜちゃんと、計画通りに推進できないのか。わかららない。
そこで調べてみると、難しい問題が浮かび上がってきた。
インフルエンザウイルスはA型とB型に大別され、日本ではA型2種類(A/H3N2、 A/H1N1pdm2009)とB型2種類(ビクトリア系統、山形系統)の計4種類のウイルスに効くワクチン(4価ワクチン)が製造されている。
各ウイルスには、さらにいくつものウイルス株があり、どのウイルス株を用いてワクチンを製造するかについては、毎年、国立感染所研修所の諮問機関である「インフルエンザワクチン株選定のための検討会議」出した流行予測をもとに、厚生労働省が決定する。