マスメディアが独占的に情報を発信していた時代には、消費者が得られる情報は少なく、企業側が発信するものを消費者がそのまま受け入れてくれたかもしれません。しかし、インターネットが普及して誰もが簡単に情報を入手できるようになり、今では商品やサービスについて企業の従業員よりも詳しいという消費者が多く存在します。お客さまと企業の関係性は変わり、お客さまが求める価値を提供することが難しくなっているのです。

 そこで当社では、お客さまは「寄り添うべき存在」と考えています。お客さまの隣に立ち、同じ方向を見て、対話しながら事業を進めることができれば、当社のサービスに目を向けていただけると信じています。

──顧客との協働による商品開発や施設作りは、時間とコストがかかりませんか。

博多マルイは開店準備に約2年をかけました。株主や投資家の方々からはよくコストをかけ過ぎではないかと言われました。

顧客に参加してもらい、その声を店舗作りや商品作りに生かしている

 しかし、「お客さま企画会議」の実施など開店準備に取り組んだ従業員が、これまでと同様に販売や仕入れ業務をしていたとしても、生み出せる企業価値には限界があったでしょう。

 それよりも、新規出店という機会に、将来的な企業価値を生み出せる可能性がある新たな取り組みへ人時を投入して活躍してもらったほうがよいと考えました。そうすれば従業員の努力が企業価値に反映され、仕事に対するやりがいにもつながるはずです。

 これまで目の前の利益を出すことしか考えず、新しいビジネスモデルを構築するために投資をしてこなかったことが、業界の低迷を招いている原因ではないでしょうか。

 博多マルイでは、お客さまやお取引先さまとともに価値を創造していくという、丸井の新たなビジョンを打ち出すことができました。このことは中長期的に価値を生み出してくれると考え、投資した価値は十分にあったと思います。

 社内の「共創」に対する意識も高まりました。「共創」を他の店舗でも実践したいという声が多く挙がっていて、順次既存店に取り入れていく予定です。たとえば「マルイファミリー溝口」(神奈川県川崎市)は、博多マルイに引けをとらない施設となるよう改革を進めています。