「相撲協会を飛ばして警察へ」は
どう考えるべきか?

 問題はほかにもある。

 日本相撲協会・八角理事長の記者会見によれば、理事会で「理事はじめメンバー全員が協力して日馬富士暴行問題の解決にあたる。これに違反するものは懲戒処分の対象になる」という決議をして確認したという。

 これではまるで、協会の聴取に応じない貴ノ岩と、所属する部屋の貴乃花親方に対する牽制ではないか。処分をちらつかせて協力させようとしているように受け取られても抗弁できず、公益通報者保護法に抵触しかねない発言だ。

 公益通報者保護法は、事業者のコンプライアンス経営を強化するために、不適切事象や法令違反行為を通報した場合、通報した者が不利益な取り扱いを受けることから保護するための法律だ。

 公益通報者保護法では、通報先を制約しないとしている。つまり、所属組織の長へ通報することに、通報者が抵抗を感じるのであれば、そのさらに上位組織に通報することができるし、第三者的な機関へ通報することもできる。

 もし、部下が、課長や課の不適切事例を、課長を飛び越えて部長に通報したら、課長は自らが不適切と思われたことや、そもそもマネジメントできていなかったことを恥じねばならない。部下に対して報復するなどは言語道断だ。同様に社長や会社の不適切事例を、会社を超えて、一般企業であれば労働基準監督署や社外の労働組合に通報することもあり得る。この場合も、会社のマネジメントは、自らが通報先として不適切と思われたことを真摯に反省しなければならない。

 この観点からは、今回の傷害事件に際して、日本相撲協会への報告ではなく、警察に被害届を提出して警察の捜査に委ねた判断は是認されるように思える。

 指導のためであろうと何の目的であろうと、暴行傷害が是認されたり許容されたりしてはならない。モンゴル特有の国民性だという解釈もあるかもしれないが、日本の法律の下で生じている出来事だ。スポーツの世界、とりわけ相撲界は特殊だから、1発や2発殴っても…という見解も見聞きするが、今回の事件は、1発や2発の程度ではないし、土俵外での出来事。明らかに暴力である。

 このように人事の観点からは、貴ノ岩サイドのアクションは是認されるように思える。それを日本相撲協会が寄ってたかって追いつめ、トンデモな言動に終始しているようであれば、それは日本相撲協会の人事マネジメントの問題なのだ。