「壮観な風景でしたよ。7~8隻ありましたかね」。10月に香川県に出張したあるビジネスマンが言う。川崎重工業が船を建造している坂出工場の岸壁には、大量のLNG(液化天然ガス)船が並んでいた。
坂出港に行けば今も多くのLNG船を見られるが、実はこれ、川崎重工によるLNG船の受注増と、同船の納期延長が生み出した期間限定の風景かもしれない。
数年前、日本の造船業界はLNGを運ぶLNG船の“特需”に沸いていた。日本の電力・ガス会社や海運会社がLNG船の発注を増やしたことから、技術力に定評のある、同じ日本の造船企業に仕事が落ちてきたからだ。
川崎重工もこの恩恵にあずかった一社だったのだが、LNG案件は一筋縄ではいかなかった。2017年度に同社の船舶海洋カンパニーで見込まれる50億円の営業赤字の主因こそ、LNG船の納期延長によるコスト増なのだ。
最新のLNG船の建造遅れという川崎重工側の要因に加え、LNG輸出プロジェクト自体の遅れが重くのしかかっている。