「会社への愛情だけは、外部からは決して移入できない」
カラーディア代表。ドラッカー研究者 佐藤等氏、ブレイントレーニングの第一人者 西田文郎氏を師と仰ぎ、ドラッカーとブレイントレーニングを色彩学に融合させる。ドラッカー読書会ファシリテーター。函館、滋賀に拠点を持ち、北海道~九州まで、全国複数拠点で読書会やセミナーを開催している。
吉田 私もドラッカーの本にハマったのは、独立したてで悩んでいるときでした(笑)。それからずっと、仕事の喜びはなにか、成果とはなにかを考えています。
御社を拝見すると、PCメガネなど今までにない商品を創造することが、社会に対する貢献につながるだけでなく、そうした成果そのものが、働く人や組織の喜びとなっているように感じます。
田中 私は、2つの「そうぞう」が大事だと思っています。イマジネーションの「想像」と、クリエイティビティの「創造」です。
この2つをいかに刺激するか。音楽を聴くのもよいし、映画を見るのもよいし、旅に出るのもよい。意識してみると、何気ない普段の生活のなかにこそ、多くの気づきがあることが分かります。「そうぞうのアンテナ」を出せるようになっているかが重要なのです。
従業員に「そうぞうのアンテナ」を立ててもらうには、会社のビジョンが明確でなければなりません。自分たちが働く意義を見出せるようなビジョンであるかどうか。ここ数年は、このような思いを強く持っています。
吉田 思いの共有はうまくいっていますか。
田中 ビジョンの共有こそが最も難しいと感じています。
社内報やミーティングで私の想いや考えを共有したり、社内でワークショップを設けたりしていますが、そう簡単ではありません。感性や価値観は人それぞれですから、私が言ったことをそのまま素直に受け止める人もいれば、違う受け止め方をする人もいます。立場や階層の違い、個人差などが掛け算となってくるのです。ただし、そこに男女差を感じたことはありません。
吉田 ドラッカーは、個人と組織、そして社会とのつながりを探究した人でもあります。単純で明快な解がないからこそ重要なテーマであり、発信し続ける必要があった。
田中 全体で一体感を感じられなければ何事も上手くいきません。また、個々人がしっかりとしていないと、組織として成果は出せません。「しっかりしている」というのは、当社でいうと、働くことにどのような意義を感じているか、ということです。
ですから私は、「当社で働く意義を感じられないならば、自分自身の大切なエネルギーを無駄にすることにもなるから、別の会社に行った方がよい」と、よく言っています。
意義を感じるとは、ビジョンへの共鳴という意味もあるのですが、自分が働いている職場や組織に愛情を持って接することができるかどうか、そこに本質的な定義があると思っています。優秀な能力や技術は、外部から導入できます。しかし、会社への愛情だけは移入できない。
従業員が愛情を持って会社に接してくれているかどうか。これは組織や経営にとって非常に大切なことです。
吉田 働く人にとっても、自分の居場所があり、愛情さえも感じられることの意味は大きいですよね。それが前向きなエネルギーを生み出すのですから。
田中 多くの従業員は、当社でやりたいことがあって入社してくれる。しかし、自分一人で全てを完結できることはありません。すべてがチームとして動いているからです。
そうすると自分がやりたかったことを実現するには、チームメンバーの共感・共鳴を得なければならない。能力よりもむしろ、人格や考え方、目標などに共感・共鳴して動いてもらう方がよい成果につながります。
多少出来は悪いが憎めない上司で、「あの人のために一肌脱ぐか」とメンバーが考えるチームと、能力的にはエッジが立っているが性格は悪い上司のチームでは、まったく成果が違います。もちろん、一肌脱ぐかのチームのほうが結果として勝るわけです。