国内市場ではもう数十年、紙おむつは高齢者用が中心となっています。一方、インドや中国にこの市場はありません。潜在ニーズがあっても、購買力が追い付いていないからです。

 でもやがて高齢者用の紙おむつも、輸出や現地生産される製品になっていきます。日本の高齢社会で困っているから、そういうものが考えられてきた。「必要は発明の母」ということでしょう。

全ての価値観は“気のせい”
「何がいいか」再考の機会に

──社会の閉塞感からリスクが取りづらく、今の若者からは、「進歩」を求めがちな大企業に入りたいとの意識が根強く感じられます。

楠木 僕が大学を卒業した87年と比べると、今の方が新卒のバリエーションは広がっていると思います。一方でいまだに優先順位としてまず大企業がある、というのは価値観の問題です。

「何がいいかが変わる」との意識変化が個人レベルでも起きないと、ビジネスでもイノベーションは起きない。これはよく言うスキル教育の問題とは少し別物ではないかと思っています。

 あっさり言ってしまうと、全ての価値観は“気のせい”なわけです。でも、それがマクロ現象に基づく社会レベルで共有されるといろいろなことが変わってくる。人口減は、皆が自分との関連性を感じられるレベルの包括的な転換点なので、「何がいいか」を考え直す非常に良い機会だとみています。

吉川 同感、同感です。

──「人口減の社会では経済成長を目指さなくてもいい」という考え方が叫ばれることもあります。

吉川 経済成長はそれ自体が目的ではありません。それはそれとして、超高齢社会こそ、人々の生活の中で困った問題が出てきて、解決する余地がたくさんあります。

楠木 一番大切な点だと思います。あらゆる商売事は結局のところ、問題解決です。そして、いつか世の中の全ての問題が解決され、「問題解決需要がなくなる」というのが起きないのが面白い点です。