「医療は適切に行われた」と語る病院側
多剤多量投与の副作用は本当になかったのか

「私たちが提訴に踏み切った最大の理由は、まず主治医から“こんなことになって残念です”とか“お気の毒です”といった慰めの言葉が、一切なかったんです。心がないというか、そういった誠意の気持ちが何も伝わってきませんでした。だから何か原因の端緒でもつかみたいと思ったんです」

 Aさんは、病院側に4度にわたって面談を申し入れた。しかし、病院側は基本的に同じような説明を繰り返したという。

 Aさんは、こう訴える。

「入院させたほうが良かったのか悪かったのか。本当に妄想だったのか。ロレツが回らなくても、ごく普通にしゃべれたことを考えると、そうした判断に疑問を抱きました。向精神薬の副作用が起きていたのではないかと。いまだに多剤多量投与が当たり前のように行われていて、先進国でもあまり例のない現実を見たとき、こうした医療体制は許されていいことではないと思います」

 今年9月29日、東京地裁で口頭弁論が開かれ、被告になった病院側は、

「死亡したのは原因不明である。医療は適切に行われた」

 などと陳述している。

 閉廷後、私は主治医に取材を申し込んだ。主治医は「なぜ私に?」と驚いたような様子を見せたが、その後は何も答えずに、エレベーターに消えて行った。

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