「言葉にできないモヤモヤを誰かにわかったもらうために、漫画を使いたいという人の需要に応えていくのが、自分の仕事なのかもしれない」

 うのさんが、これから生きていく方向性を見定める出来事になった。

引きこもったことで
見えてきたものがあった

 筆者がうのさんと初めて会ったのは、ある講演に招かれたとき。終了後に彼女が声をかけてくれたのがきっかけだった。

 うのさんは、震災で津波が押し寄せるとわかっているのに、家を出られる当事者と出られない当事者がいたという筆者の当連載の記事をネットで読み、話を聞いてもらいたいと思ったという。

 もともと、医療従事者を目指して医科大学に通っていたうのさんは、漫画家になることも、手塚治虫のように実現できたら、と幼い頃から夢見ていた。ただ、引きこもっていたときは声が出ず、本も読めないくらい何もすることができなかった。外に出るくらいなら、死んだほうがいい。生きる意味がわからず、自分1人のために冷暖房を使うのも申し訳ないように思っていた。

 食欲もないので、食事は買いだめしたダイエット飲料のみで栄養を摂る日が続いた。好きだったはずの漫画を描ける気力も残っていなかった。

「引きこもったことで、自分の贅肉のように付いていたムダなものがなくなったんじゃないかと思うんです」

「こもりん。」も、引きこもったことによって削ぎ落とされた今の状態から生まれてきた。