生活保護基準を現状のまま維持しても、あるいは2013年の引き下げ以前の水準に戻しても、日本の社会の問題が急激に解決されるわけではないだろう。生活保護世帯の子どもたちの大学進学が急増することもないだろう。生活保護世帯の子どもたちが生活保護世帯をつくる「貧困の世代間連鎖」の可能性も、それほど急激には減少しないだろう。

 しかし生活保護基準が高くなれば、「省エネ」と無縁な20年前の冷蔵庫やエアコンを使い続ける人々は減るだろう。冷暖房器具が故障した際に中古品ではなく、消費するエネルギーが少なく効率の良い新品を購入できるようになれば、本人たちは電気代や灯油代を節約できる。統計に数値が現れるほど大きな影響ではないかもしれないが、二酸化炭素の排出量も減らせるだろう。逆に生活保護基準を低めれば、日本は世界の地球温暖化防止の脚を引っ張ることになる。

 日本で生活保護のもとで暮らす約210万人の人々が、ゼイタクではないけれども充分な品質の住宅に暮らし、極度に暑すぎたり寒すぎたりすることのない生活環境のもとで、日々、自然に幸福感や生きがいを感じながら暮らせるようにすることは、日本全体にとっての数多くのメリットを生む。

生活保護基準を高めれば
地球温暖化も防止できる

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 そして実のところ、ほとんどデメリットはない。最低賃金を下げさせず高めるための“圧力”となり、社会の安心感を高め、多くの人々の勤労意欲や創造性を高めるのではないだろうか。少なくとも、「生活保護基準を引き下げることが社会の生産性を高めた」という事実はない。

 生活保護の人々の毎日をより「健康で文化的」にすることは、おそらく確実に日本の国益となる。さらに、その人々の生活環境が改善されることそのものが、若干の地球温暖化対策になる。そして、日本と世界から戦乱を遠ざけることに、わずかだが確実に貢献する。

 新しい年を新しい展望と根拠ある楽観のもとに迎え、引き続き、読者の皆様とともに「私たちの明日」を考えたい。

(フリーランス・ライター みわよしこ)