消費増税と並ぶ社会保障・税一体改革の目玉は、低所得者への年金加算である。一見すると改善にみえる低所得者加算は、公平性を著しく損う、保険料納付意欲を削ぐといった年金制度の根幹を揺るがしかねない問題をはらんでいる。

一体改革のアメかアキレス腱か

 前回まで、年金制度を解説するなかで、改革の主要トピックスについて述べてきた。それらは、厚生年金へのパート労働者適用拡大、第3号被保険者問題、国民年金の納付率低迷いわゆる国民年金の空洞化問題、および、マクロ経済スライドなどである。

 これまで採りあげていないものの、今回の社会保障・税一体改革のなかで、今後の動向が極めて注目されるものとして、低所得者への年金加算がある。今回は、これを採りあげる。それは、この政策が素晴らしいからではない。消費税率引き上げの成否に強く影響を与えると考えられるからだ。

 政府・与党は、来年通常国会への法案提出を目指し、社会保障・税一体改革の最終とりまとめを急いでいる。柱は、消費税率の5%引き上げであるが、他方、社会保障のうち年金に関し、最大の目玉となっているのが低所得者への年金加算である(以下、低所得者加算)。これは、もとの月収と加算額との合計額月7万円を上限に、最大月1.6万円を加算するものであり(図表1)、所要資金は0.6兆円と試算されている。