前回まで消費税を採り上げた。消費税に関し、今回の社会保障・税一体改革においては、その使途に論点が偏り、医療に対する非課税問題など税目としての議論が不足していることを指摘した。税制に関しては、真に社会保障・税一体改革であるならば中核的テーマとなるはずの給付付き税額控除も、具体的な議論を全くみることができない。給付付き税額控除は、貧困対策、就労促進、財政健全化、行政改革、国民の利便性向上などまさに一石五鳥あるいはそれ以上の可能性を秘めている。そこで今回と次回は給付付き税額控除を採り上げる。

 給付付き税額控除とは、おおまかにいえば、個人所得税制(以下、所得税制)を通じて、税負担の調整のみならず、低所得層に対する現金給付まで行う政策ツールである。所得税制を「徴税」だけでなく「給付」にも用いるものであり、税制が社会保障の機能を包摂した仕組みといえる。以下では、その特徴のうち次の3点に着目し、それぞれ掘り下げていく。そのことによって、給付付き税額控除のメリットが、よりクリアに浮かび上がってくるからである。

1.その名の通り、所得控除ではなく税額控除であり、しかも給付付きである。
2.個人への直接的な現金給付である。
3.社会保障制度ではなく税制を通じた給付である。

税額控除しかも給付付きとは
どういうことか

 第1に、給付付き税額控除は、その名の通り、税額控除でありしかも給付付きであるということである。控除とは、ある金額から一定の金額を差し引くことを言うが、そもそも所得税の納付税額を算出するプロセスにおいて、税負担を軽減する控除形式の種類としては、大きく所得控除と税額控除の2つがある(次ページ図表1参照)。