最低、最悪の上司に仕えたことがある。まさに拙書『もし顔を見るのも嫌な人間が上司になったら』(文春新書)のタイトル通りの男だ。
彼は、私の課長として赴任してきた。仮にAとしておこう。私は彼の直属の部下、すなわちナンバー2だ。
最悪上司の最悪な行状
Aの最低、最悪を幾つか列挙しよう。
①エリート風を吹かせまくる。
Aは、かつての銀行トップの縁戚だという噂を自分で流していたが、その血統が有効に作用したのか、人事部などでキャリアを積んだエリートだった。
赴任直後、私に聞こえるように、人事部の上司に「私も営業店の課長ですよ。現場の経験を積めということでしょうね。しっかりやらせていただき、すぐにそちらに戻りますから。よろしくお願いします」と電話した。まるで自分は、君たちのような現場育ち(当時私は営業店しか経験していなかった)とは違うのだとでも言いたげだった。
そしてつかつかと私に近寄り「江上君、家を買っていないなら、君は私の近くに家を買いたまえ。偉くなれるから」とのたまわったのだ。Aの自宅は田園調布だった。私は当然、「無理です」と断った。
②下の叱り方が尋常じゃない。
Aは、部下のやる気を無くさせるような叱り方をした。私には何も言わないが、もっと弱い、要領の悪い部下には、大声で叱り、謝っても、謝っても、逃げ道を塞ぎ、ギリギリと締め上げた。傍で聞いているだけで胃が痛くなった。部下を育てるために叱っているというより、上司に向って、部下を指導しているというアピールのためのようだった。叱られた部下は、どんどんやる気を無くして行った。