中国社会のリアル、社会主義の強権と資本主義の自由が混在筆者が今冬に中国・北京を訪れた際に見ることができた、きれいな朝焼け。大気汚染の劇的な改善が垣間見えた Photo by Izuru Kato

 世界経済の好調さもあって、中国国内のエコノミストや国際機関は2018年の中国経済を比較的楽観視している。先日の出張時に中国・北京郊外でマンション価格が下落しているという話を聞いたが、全体的には不動産市場も安定している。

 ところで、近年の冬の北京は、PM2.5(微小粒子状物質)による大気汚染で空が黄色く、薄暗くなることが多かった。15、16年の10~12月の3カ月間において、北京の米国大使館が公表している大気質指数が200を超えた日は、いずれも39日間あった。

 そうした日には、ホテル内にいても喉が不快になる。米環境保護庁のアドバイスでは、200超は「極めて健康に良くない:心疾患や肺疾患を持つ人、高齢者、子供は、全ての屋外活動を中止する必要がある。それ以外の人でも、長時間または激しい活動を中止する必要がある」だ。

 ところが、今シーズンは状況が劇的に改善している。12月下旬に北京に行った際は予想外の青空が連日見られた。写真のように朝焼けもきれいだった(遠方の超高層ビルは、中国一高い108階建て、528メートルになる予定の中国尊ビル)。この冬の大気質指数は100を超す日が大幅に減っている。

 天候要因(風が強く吹く日が今シーズンは多い)も効いているようだが、それ以上に中国政府が北京市、天津市とその周辺の26都市に対して、石炭を大量消費する鉄鋼生産や石炭による暖房を厳しく制限し始めたことが大きい。慌てて電気自動車へシフトしなくてもよいのではないか、と感じる人が出てきても不思議はないほどの青空が見られている。

 しかしながら、副作用も生じている。石炭の代替エネルギーとなる天然ガスの供給が追い付かず、農村部では暖房が途切れ、小学校などで凍える子供たちが続出した。