日本では遺言を取り巻く環境が、平成30年の今年、劇的に変わりつつあります。今回のコラムではふたつご紹介します。

遺言の新制度が始まる!?

 ひとつめは、昨年12月に「法務省による自筆証書遺言の保管制度創設」を銀行業界が提案したことです。これは、自筆の遺言書を法務局に預ける新制度を創設するもので、全国銀行協会委員が提案したことを発端としています。

 具体的には、全国約400ヵ所の法務局で自筆証書遺言の原本と画像データを保管し、遺言者の死亡時に相続人や遺言執行者が閲覧できるようにするものです。保管時に法務局が遺言形式に関して審査を行うことも検討されており、記載不備による遺言無効が激減するものと推測されます。

 またそれに伴って、今まで自筆証書遺言に対して家庭裁判所で行われていた「検認」手続が新制度利用で省略される可能性があります。

 なにより嬉しいのは、現在、公正証書遺言作成には、遺言者の財産総額に応じて数万円から十数万円の費用がかかりますが、新制度ではその費用を低額に抑えたい考えのようです。

 そうなると、自筆証書遺言と公正証書遺言を比べた場合、法的効力は同等で作成コストが安い自筆証書遺言が俄然クローズアップされることが想定されます。実現したら、まさに自筆証書遺言が公正証書遺言に肩を並べた瞬間です。

 新制度は、早ければ平成30年度中にも民法が改正され、その中のひとつとなる見通しです。