監督署の調査で残業の未払いや
私腹を肥やした部長の遊興三昧が発覚

 数日後、労働基準監督官(以下、監督官)を名乗る男性がG社の事務所にやって来た。調査のため、タイムカード、賃金台帳、雇用契約書、就業規則、健康診断個人票などを見せてほしいとのことだった。

 事務所にいた松岡は、突然のことに驚きながらも、事務員に命じて帳簿を出させた。しばらく書類を見ていた監督官が、松岡に告げた。

「アルバイトは、日給ですよね?法律上の労働時間を超えているにもかかわらず、割増賃金が支払われていませんね。これは2年遡って払ってもらいます。その他にもいろいろと指摘事項があります。是正勧告書を書きますから、少し待ってください」

 松岡は驚き、「バイトに残業代なんてあるわけないでしょ!?」と尋ねた。

 偶然にも事務所にいた竹山が、監督官と松岡のやり取りに割って入って来た。

「部長、バイトにも残業代を払う必要がありますよ。以前は払っていました。部長が管理を始めるようになってから、出していないだけです。それに、バイトから遅刻やクレームで罰金を1万円も2万円も取るのは、法律違反ですよね?」と監督官に問いかけた。

 監督官は竹山に詳しく事情を聴くと、「その件についても違反だ」と指摘した。

 監督官から是正勧告書を受け取った松岡は、社長に報告せざるを得なかった。事態を知り激怒した社長は、後日、人事異動で松岡の降格を発表、現場に戻すことになった。また、バイトから徴収していた罰金は、松岡が全てキャバクラなどの遊興費に使っていたことも判明し、全額を返すように命じた。

ブラック上司が
組織を崩壊させる

 今回、監督署がG社に突然来た背景には、アルバイトたちの行動があった。たびたび罰金を取られた梅田たちは監督署に相談にしていたのである。そこで、労務管理上疑問に思っていたことをいろいろと相談したところ、調査することになったのだ。

 報告を受けた社長は、後日、「自分の監督不行き届きだった」と従業員に謝罪した。その上で、本来支給すべきだった残業代も支払うことを約束し、当面の間、社長が管理することを伝えた。おかげでアルバイトの大量離職も防ぐことができ、事なきを得たのである。