学習能力や仕事に関わる能力など、徐々に上がっていけばいいものですが、最初から集中力が高い状態であれば、能力の上昇値は飛躍します。そして、試験やプレゼンなど大事なシーンでの失敗はなくなります。今回は、ある行為をすることで、自身のパフォーマンスを強化する3つのスイッチに触れます。
本連載では、脳の仕組みを活用した世界水準の集中力を磨く技術が網羅されている新刊『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる超集中術』から集中術のエッセンスを紹介していきます。

スムーズに取りかかるための儀式を用意する

 仕事や勉強に取りかかる際には、なんとなく始めるのではなく、最初から集中力が高い状態でスタートできればベストです。

 毎回、この状態で始めることの積み重ねが、結果に大きな違いをもたらすからです。最初から集中力を上げて取り組むことができるヒントがスポーツの世界にあります。

 最近では有名になったので、「ルーティン」をご存じの方も多いでしょう。

 ルーティンとは、本番直前に毎回決まった動作などを行う、ある意味儀式のようなものです。

 特に、スポーツの世界でこのルーティンを使っている選手が多く存在します。

 練習の段階から取り入れることで、本番においてもスムーズに競技に集中できるという効果があります。そこでアスリートたちは、このルーティンを「集中力のスイッチ」にしているのです。

 心理学的にも、パフォーマンスの強化・向上につながることが明らかになっています。これは仕事や勉強を始めるときにも同じく有効に働きます。

 ここから集中力アップのためのルーティンのつくり方を順番に説明していきます。

1.最初にポジティブな言葉を声に出す

 これには単なるムードづくりではなく、ちゃんとした理由があります。

 脳の中で言葉を話す役割の場所があるのですが、この場所はしゃべることと同時に体を動かすことも担当しています。そこで言葉を話すことでこの場所が刺激され、体も行動を起こす準備を始めるのです。

 言葉の内容は、「これから集中するぞ」や「はじめから乗っていくぞ」などポジティブなものにします。

2.やる気がでるイメージを浮かべる

 スポーツ心理学の権威、ジム・レーヤー氏は心理状態や行動をコントロールするために、イメージバンクをつくっておくことを提唱しています。イメージバンクとは、その映像を頭の中に浮かべると「リラックス」できたり、「やる気」を引き起こしたりできるイメージのストックのことです。

 ここでは「やる気」を起こすイメージを使います。

 これから行うことの内容に関係なくても構いません。たとえば、「好きな歌手のイメージ」や「好きなスポーツ選手のプレイのイメージ」だったり、「自分がスピードを上げて車を運転している」など、やる気が刺激されさえすれば何でも大丈夫です。

3.最後に決まった動作をしてから作業を開始する

 毎回、ルーティンの最後に同じ動作を設定しておきます。

 この動作を繰り返すことにより脳がそれをスタートのスイッチと認識するようになってきます。

 この動作も毎回同じであれば何でも構いません。「ノック式ボールペンをカチカチと2回鳴らす」「パソコンの電源を入れる」「腕時計をさわる」など。私の場合は、音をシャットアウトするヘッドホンをつけることがこれにあたります。

 ルーティンはそんなに大げさなものではありません。簡単に自身のルーティンをつくることができます。

 これが長い目で見れば大きな差として現れるのですから、設定しておくに越したことはありません。

「集中力のスイッチ」を手に入れる3つの方法