米国経済の本格回復、そしてドル高転換への道のりは遠そうだ。
1月8日発表の米国の12月雇用統計によれば、非農業部門雇用者数は前月比8万5000人減となった。米国経済回復によるプラス転換も見込んでいた市場の予想を大きく裏切る結果となった。
昨年12月1日に日本銀行が10兆円の資金供給策を発表し、実質的な量的緩和に踏み込んで以降、86円台から93円台まで低下していた円の対ドルレートは、雇用統計発表を受け、12日には91円台にまで押し戻された。
為替市場では、非農業部門雇用者数の減少幅が縮小基調にあることなどから、早ければ今年半ばにもFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げに動くとの観測も浮上し、ドル高円安が進行していた。しかし、今回の雇用統計によって一転して「利上げ時期は早くとも秋以降」との見方が増えてきた。
雇用統計を子細に見ていくと、米国景気の脆弱さがさらに浮き彫りになる。
12月の失業率こそ10・0%と前月比変わらずだったが、これは求職者数そのものが減少したため。非労働力人口が増えているなかで職を求めているのに職に就けない失業者数は、11月に比べて7万3000人減少した。要は失業者数、雇用者数共に減少したため、数値が変わらなかっただけなのだ。
11月の雇用者数は1万5000人上方修正され、4000人増と1年11ヵ月ぶりに増加したが、一方で10月の雇用者数は1万6000人下方修正された。差し引き1000人の減少だ。11月の上方修正は統計のあやの域を超えるものではない。
今後の雇用動向を占ううえで、ポイントとなる週平均の労働時間も前月と同じ33・2時間と横ばいにとどまった。
こうした材料から見て、今後も雇用の改善傾向が続くと見るには力不足である。FRBは現在の実質ゼロ金利政策を早期に解除するのは難しいだろう。
そもそも日本と米国の政策金利差が2~3%にならないと、ドル高が継続する状況にはならないというのがセオリー。「米国経済は6%のデフレギャップ」(田中泰輔・野村證券外国為替ストラテジスト)を抱えている。年内にドル高に転換するだけの金利差が生じるとは考えにくい。
米経済指標の動きによっては、短期的にはドル高円安が進む局面はあるかもしれないが、本格的なドル高は米国経済の足取り同様、来年以降となりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)