「総論賛成、各論反対」に陥りがちな財政健全化施策

 まず『自治体』。筆者が取材を通して感じるところとして、そもそも財政健全化に本気で向き合える自治体首長の数が限られている。健全化の痛みを住民に背負わせることで自らの選挙戦を不利にしたり、議会との対立を生むことも多いからだ。よほど志の高い首長か、強固な支持基盤を持つ者でないと、財政健全化を本気で進めることはできない。

 加えて財政の話は選挙の際にほとんど票につながらない。得票を伸ばすためには、団体の会合や式典に顔を出すなど、住民との接触を増やすことが効果的。選挙戦は人と人のつながりの数が勝敗を分ける。

 財政健全化を進めたある市長を取材した際、口にしていた言葉が印象的だった。「地盤がなければ改革はできない。だから、安定した地盤のために住民と接触することで、やりたいことに着手できる」。

『住民』に話を移す。住民は普段から自治体財政に関する情報に触れる機会が少なく、財政に興味を抱くきっかけが少ない。財政健全化を進めることに賛成か反対かを問えば、総論としてはもちろん賛成であろう。自分が住む自治体が借金を抱えているよりは、減ったほうがよく、財政面で健全であることに反対する住民はなかなかいないだろう。

 しかし、総論賛成、各論反対という言葉があるように、いざ自分の近辺に直接影響が出ると、どうしても反対をしてしまう。例えば、公共交通の赤字路線の廃止や、補助金のカットなど、自治体の財政を健全化する適切な施策であったとしても、いままで恩恵を受けていた当の住民から納得感を得ることは簡単ではない。

 住民の代表である地方議員。地方議会と自治体の関係が理解されていないことも多いのだが、地方議会には自治体の予算決定権がある。そのため、自治体財政に関する説明や健全化の推進を議員にも期待したいところではある。ただ彼らにも首長同様に選挙が待ち受ける。議員にとっても財政健全化は票にならないどころか、むしろ敵を作ることになる。つまり正面から財政健全化を謳うと「各論反対」層の票を捨てることになりかねない。仮に、自身が議員であり、その報酬で家族を養っていたとしたら、あえて波風を立てたくないという気持ちが生じるのは理解できなくもない。徹底的に財政健全化を推進することができるのは、やはり、強固な支持基盤と志と勇気を持ち、リスクを厭わない一握りの議員だろう。