本連載では、話題の新刊『最先端科学×マインドフルネスで実現する 最強のメンタル』の内容から、エビデンスに基づいた最新科学の知見をもとに、現代人が抱える2大メンタル問題「ストレス」と「プレッシャー」を克服し、常に安定して高いパフォーマンスを発揮するための方法をお伝えしていく。

脳を「中覚醒状態」にすると仕事のパフォーマンスが上がる

脳を中覚醒状態にするとパフォーマンスが高まる

 私は、いかなる状況でも一定のパフォーマンスを出し続けるメンタルのことを「最強のメンタル」と定義しました。それは、変身したスーパーマンになることではありません。

 あくまでも自分の持てる能力を限られた時間、環境の中で最大限に引き出す能力のことです。

 スポーツに関心がある方なら、ゾーンという言葉を耳にしたことがあるかもしれません。ゾーンとは、最高の精神状態を表す言葉のことで、心理学分野ではフロー、スポーツ心理学分野ではピークパフォーマンスと呼ばれています。

 いくつかのビジネス書にも「ゾーンに入って仕事をバリバリこなそう!」という趣旨のものを目にします。しかし、残念ながら意識的にゾーン状態に入るのは極めて困難なことなのです。

 ゾーンは、リラックスと集中が極まった状態であり、ミリ単位でダイヤルがピタッとはまった精神状態です。寸分の狂いも許されません。

 そのような精神状態を、果たして意のままに操れるでしょうか?

 リラックスした安静空間であれば、それに近い状態は訓練によってある程度つくり出すことができます。しかし、プレッシャーのかかる場面で、毎回その状態を意図的につくり出すことは非常に困難です。

 実際、当のアスリートたちでさえ、真のゾーンに入った経験のある人たちはそう多くはいないのです。

 さらに、ゾーンに入った経験のあるアスリートたちに「もう一度その状態をつくれるか?」と質問すれば、きっとできないと答えるでしょう。ゾーンとは、それほど感覚的で、捉えどころのないものなのです。

 一方で、数少ないとはいえ、数名のアスリートは実際にゾーンを体験していますから、少なくとも人間の脳には、そうした未知の能力が存在することは否定できません。ただ、そのスイッチの在処が科学的にまだよくわからないということです。